2002 Fiscal Year Annual Research Report
有機溶媒耐性微生物を用いた環境調和型物質生産プロセスの構築
Project/Area Number |
12839017
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Research Institution | Osaka Prefecture University |
Principal Investigator |
石見 紘策 大阪府立大学, 大学院・工学研究科, 助教授 (30081350)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
荻野 博康 大阪府立大学, 大学院・工学研究科, 講師 (80233443)
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Keywords | 有機溶媒耐性酵素 / Pseudomonas aeruginosa / リパーゼ / 有機溶媒耐性微生物 / 気液液間物質移動 / ジャーファメンター |
Research Abstract |
現在、目本の化学産業は、生産量の多いバルク製品を対象とした産業から機能性製品やファインケミカル製品を対象とした産業に移行しつつある。これらファインケミカル製品等の製造に微生物等の生体触媒を用いることができれば、反応が特異的に進むため反応工程数の削減と副生成物量の低減が計れる。一般の微生物は有機溶媒中などの特殊環境下では成育できないが、申請者らが先に取得した有機溶媒耐性微生物は有機溶媒存在下で成育し、かつ有機溶媒に安定な酵素を分泌生産する。そこで、本研究では有機溶媒存在下で有機溶媒耐性微生物を用いた物質転換システムの構築を目的とする。 P.aeruginosa LST-03株は、logP値が2.4以上の有機溶媒を添加した培養液で生育した。菌体の増殖率を効果的に高められる条件を求め、これらの条件下で菌体を回分培養したところ、培養開始後11時間で乾燥細胞質量にして14g/Lの最大菌体濃度に達し、さらに培養開始後90時間でリパーゼ活性は28kI.U./Lの非常に高い値に達した。さらに空気-水溶液-シクロヘキサン系におけるジャーファメンターでの気液液間物質移動について検討し、容量係数に及ぼすシクロヘキサン分率や操作条件の影響を調べるとともに、ジャーファメンターを用いてシクロヘキサンを添加した培養液で菌体を培養したところ、LST-03株のリパーゼがシクロヘキサン存在下では存在しない場合よりもきわめて安定であることがわかり、反応プロセスに菌体をそのまま利用できる可能性が示唆された。そこで有機溶媒を含む環境調和型物質生産プロセスの有用性を評価し、系内の状態を定量的に解析するために、トリグリセリドや脂肪酸エステルあるいは天然油脂などを用いた脂肪酸の生成モデル系としてオリーブ油の主成分であるトリオレインの加水分解を取り上げ、その反応動力学について検討した。その結果、LST-03株の分泌するリパーゼによるトリオレインからジオレイン、モノオレイン、オレイン酸への各反応がMichaelis-Menten型の比較的単純な反応速度式で表されることがわかり、この反応操作の定量的評価が可能になった。本反応系では、グリセリンを除くすべての反応生成物が有機溶媒に溶けるため、反応は容易に進行し、しかも副生成物を生成しない。したがってLST-03株を用いた発酵プロセスは、極めて効率の良い、しかも反応工程数の少ないプロセスになるものと期待できる。
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