2000 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
12871001
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Exploratory Research
|
Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
和泉 ちえ 千葉大学, 文学部, 助教授 (70301091)
|
Keywords | プラトン / エピノミス / ギリシア / オリエント / 太陽 / 星辰 / 偽書 / 文体 |
Research Abstract |
プラトン『エピノミス』原典を、従来の注釈書を批判的に検討しながら精読し、新たな視点でコメンタリーを編むための基礎作業を続けた。この作業を通して得られた本年度の主な成果としては、以下の点が挙げられる。 第一に『エピノミス』を巡る真偽問題について。現在、『エピノミス』をプラトンの真作とみなす諸家は少ない。その証拠としてしばしば言及されるのは、『エピノミス』には他のプラトンの諸作品にはみられない特異な文体および表現が散見される、という点である。しかし、文体および表現上の特異性を上回るプラトン的常套表現が『エピノミス』の骨格を形成していることもまた事実であった。この点に着目する限り、『エピノミス』は必ずしもプラトン偽書とは言い難い。むしろ探究すべきは、あくまでも『エピノミス』のプラトン的背景に立脚しつつ、散見される特異な文体表現が本作品の主題と如何に必然的な関係を結んでいるのかという点であろう。来年度はこの問題についてさらに考究する。 第二に、『エピノミス』の背景には東方占星術の思想が流れているという指摘について。星辰崇拝を彷佛とさせる記述を含む『エピノミス』の背景には、オリエント的占星術の思想が流れていると従来みなされており、この見解は現在解釈の主流を占めている。しかしこの解釈は『エピノミス』理解にとって妨げとなることを本研究は主張する。確かに『エピノミス』は、ギリシア的トポスの中心を占める「太陽」に焦点をあてず、星辰界に目を向けている。だがその視座は、あくまでもギリシア中心主義であった。なぜならギリシア的太陽の領域を越えこそすれ、『エピノミス』が心血を注いでいるのは、オリエント的起源をもつ星々の名前のヘレニゼーションなのである。
|
Research Products
(2 results)