2000 Fiscal Year Annual Research Report
ライプニッツ哲学における懐疑論の役割-予定調和と類比の意味論の生成の研究-
Project/Area Number |
12871002
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
松田 毅 神戸大学, 文学部, 助教授 (70222304)
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Keywords | ライプニッツ / 懐疑主義 / シモン・フーシェ / 認識論 / 予定調和 / 表現 / マルブランシュ |
Research Abstract |
今年度は、当初計画していた通り、ライプニッツ哲学の形成における懐疑主義の役割を主として、ライプニッツの友人、シモン・フーシェとライプニッツとの関わりを明らかにすることから始めた。フーシェは、ポスト・デカルト主義の文脈で古代の懐疑主義の研究を行いつつ、マルブランシュの『真理の探究』における「観念」を対象として把握する学説を厳しく批判したが、この点がライプニッツの予定調和の仮説と「構造的類比」とも呼べる意味論の形成に果たした影響を解明した。たまたまドイツ学術交流会の招きにより、2000年4月から3ヶ月間、ハノーバーのライプニッツ文書館に研究滞在することができ、そこでライプニッツが熱心な書き込みを残したフーシェのマルブランシュ批判書の原本などを閲覧することで、1675年当時のライプニッツにとって「観念」の存在規定をめぐるポスト・デカルト主義の論争が、「観念」の概念を「表現」概念へと転換・発展させ、そこに予定調和の仮説と「構造的類比」に基づぐ認識論の展開する地盤が作られる経緯を明らかにした。またその際、同時に、その滞在中にアルゼンチンの研究者、オラソによって取り上げられた未公刊の遺稿の存在を知ったが、その1711年ころに書かれたと推定されるセクストス・エンペイリコスの『ピュロン主義の概要』第1巻に関する注解の訳出と分析により、ライプニッツ哲学にとって懐疑主義がもつ意味が、通常考えられている以上に大きいものであることも示した。ライプニッツの認識論を理解する上で、古代と近世双方の懐疑主義論駁の動機とそのストラテジーを明らかにする重要性を今後は、同時代および現代の関連する諸問題やアプローチを参照することで、検討することが課題となる。
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Research Products
(2 results)
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[Publications] 松田毅: "ライプニッツ哲学の形成における懐疑主義の役割-「観念」の存在規定をめぐるシモン・フーシェのマルプランシュ批判から-"神戸大学文学部『紀要』. 28号. 1-57 (2001)
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[Publications] 松田毅: "ライプニッツの懐疑主義論駁の試みをめぐって-1711年のある未公刊の草稿の提起する諸問題-"神戸大学大学院文化学研究科『文化学年報』. 20号. 1-53 (2001)