2000 Fiscal Year Annual Research Report
健常者の幻覚様体験の研究:精神分裂病の幻覚との比較研究と因果的発生研究
Project/Area Number |
12871015
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Research Category |
Grant-in-Aid for Exploratory Research
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
丹野 義彦 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 助教授 (60179926)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
石垣 琢磨 横浜国立大学, 人間教育科学部, 助教授 (70323920)
望月 聡 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 助手 (30313175)
中安 信夫 東京大学, 大学院・医学系研究科, 助教授 (70126134)
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Keywords | 精神分裂病 / 幻覚 / 妄想 / 質問紙法 / 内言 |
Research Abstract |
まず,幻覚についての心理学的研究をレビューし詳細な文献研究をおこなった。その結果わかったのは,ほとんどが幻視の研究であり,幻聴や体感幻覚についての研究は少ないこと,逸話の紹介・収集あるいは単なる体験率を調べるだけに終わっており,健常者の幻覚はどのようなメカニズムでおこるのか,知覚・思考・記憶・夢などの幻覚類縁の現象との異同は何か,病的な幻覚とどのような異同があるのか,などについての考察がないことであった。そこで,健常者について幻聴を中心とする幻覚体験を調べる質問紙を作成し,どのくらいの割合の健常者が幻聴を体験しているのか調べ,また,知覚・思考・記憶などの表象活動との関連を調べた。幻聴様体験や表象活動などの現象を17個のカテゴリーにまとめ,65項目からなる幻聴様体験質問紙(Auditory-Hallucination-like Experiences Scale)を開発した。大学生168名を対象に調査をおこなった結果,ヒアリングボイス体験(幻聴体験)は約30%,テレパシー体験は約45%の体験率を得た。こうした病理性の強い現象の体験率が高いことは注目される。幻聴様体験がどのような表象体験から発生するかを考えるために,正準相関分析やパス解析をおこなった結果,ヒアリングボイス体験は聴覚の変調や夢と関係が深く,一方,テレパシー体験は聴覚記憶や内言的思考活動と関係が深いことがわかった。ここから,ヒアリングボイス体験とテレパシー体験では,起源となる表象活動が異なることが示唆された。この成果は国際心理学会議で報告し,また,海外の幻覚・妄想の研究者と情報交換をおこない,協同研究を企画した。多次元式のアセスメントや面接法などを用いて,異常体験の発生メカニズムをさらに検討することが今後の課題である。
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Research Products
(8 results)
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[Publications] Tanno Yoshihiko: "Reliability and validity of the scales measuring theme of paranoid ideation"International Journal of Psychology. 35. 75-75 (2000)
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[Publications] Ishigaki Takuma: "Analysis of anditory hallucination using semistructrued Interview for Auditory Hallucination"International Journal of Psychology. 35. 75-75 (2000)
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[Publications] 丹野義彦: "知覚遮断状況における幻覚発生のメカニズム-文献レビューと要素分析"Cognitive and Benarioral Scieua Research Report. 00-J4. 1-23 (2001)
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[Publications] 丹野義彦: "妄想的観念の主題を測定する尺度の作成"心理学研究. 71. 379-386 (2000)
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[Publications] 丹野義彦: "妄想の認知理論とアセスメント"精神科診断学. 11. 323-334 (2000)
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[Publications] 森本幸子,丹野義彦: "被害観念の発生に関する研究-どんなストレッサーと素因が被害観念の発生を予測するのか"日本行動計量学会第28回大会発表論文集. 28. 187-188 (2000)
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[Publications] 石垣琢磨: "幻聴と妄想の認知臨床心理学"東京大学出版会. 185 (2001)
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[Publications] 丹野義彦: "精神分裂病の発生メカニズム研究「児童心理学の進歩2000年版」"金子書房. 3 (2000)