2002 Fiscal Year Annual Research Report
健常者の幻覚様体験の研究:精神分裂病の幻覚との比較研究と因果的発生研究
Project/Area Number |
12871015
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
丹野 義彦 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 助教授 (60179926)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
石垣 琢磨 横浜国立大学, 教育人間科学部, 助教授 (70323920)
望月 聡 筑波大学, 心理学系, 講師 (30313175)
中安 信夫 東京大学, 大学院・医学系研究科, 助教授 (70126134)
|
Keywords | 精神分裂病 / 幻聴 / 幻覚 / 質問紙法 / 妄想 |
Research Abstract |
幻聴体験をはかる質問紙法(ヒアリングボイス質問紙)を作成し,大学生に実施した結果、37.8%の学生が何らかの幻聴体験をしていることが明らかになった。先行研究の結果よりもかなり高い値である。そうした幻聴体験の発生メカニズムについて、侵入思考モデルを検討した。侵入思考モデルとは、幻聴が「認知的不協和を低減するために、侵入思考が外的に帰属された時に生じる。この認知的不協和は、侵入思考と相容れないメタ認知信念(とくに、思考の統制に関する信念)によっておこる」とするものである。素因-ストレス型の縦断調査(パネル調査)をおこない,因果関係を推論できる準実験のパラダイムを用いた。健常者を対象として,2週間の間をおいて2回の調査をおこなった。その結果、メタ認知信念を素因として、幻聴体験についての素因ストレスモデルが成り立つことがわかった。一定の素因(メタ認知信念)をもつ人は、対人関係におけるストレスを体験した時に、ネガティブな内容の幻聴体験を多く経験していた。これは準実験的な方法であり,単なる相関関係ではなく,幻覚への態度がヒアリングボイス体験に及ぼす因果関係を確かめることができた点で意義が高い。こうした知見は、幻聴体験を予防するに当たって、ストレス対処教育が有効性ではないかと予想させるものであり、また幻聴の精神病理学や治療にも示唆を与えるものである。
|
Research Products
(7 results)
-
[Publications] Morimoto, S., Tanno, Y.: "The prediction of persecutory thoughts using hierarchical multiple regression analysis"Resent Advances in Early Intervention and Prevention in Psychiatric Disorder. 218-219 (2002)
-
[Publications] Morimoto, S, Tanno, Y.: "The relationship of paranoid ideations and persecutory experiences"International Congress of Applied Psychology. 第22回. 45 (2002)
-
[Publications] Morimoto, S, Tanno, Y.: "Measurement of Delusional Thoughts in College Students"World Congress of Psychiatry. 第12回. 41 (2002)
-
[Publications] Sasaki, J., Tanno, Y: "Two Ideations of Social Anxiety"World Congress of Psychiatry. 第12回. 119 (2002)
-
[Publications] 山崎修道, 丹野義彦ほか: "精神分裂病の陽性症状に関するアセスメント-半構造化面接SRPPECの検討"日本教育心理学会大会. 第44回. 52 (2002)
-
[Publications] 山崎修道, 丹野義彦: "健常者の妄想的観念と強迫観念の関係について-パス解析を用いた分析"日本性格心理学会大会. 第11回. 102 (2002)
-
[Publications] 丹野義彦: "講座臨床心理学第4巻 異常心理学II 妄想と自我障害"東京大学出版会. 17 (2002)