2000 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
12871017
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
岡田 猛 名古屋大学, 大学院・教育発達科学研究科, 助教授 (70281061)
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Keywords | 創造性 / 認知心理学 / 芸術 |
Research Abstract |
近年、創造性に関する認知心理学的なアプローチに基づく研究が、科学的発見や創造的な問題解決を対象に行われるようになってきた。そこでは、天才と呼ばれる特別な人物によってのみ可能な、人間離れした特別なプロセスを経て創造的な作品や発見が生み出されるのではなく、人が日常的に用いている認知プロセスが組み合わされることによって創造活動が営まれ、何らかの特別な作品やアイデアが生み出されるのであると考えられている。 本研究では、そのような視点に立ち、芸術創作のプロセスを、認知心理学的な手法を用いて詳細に解明することを目的としている。具体的には、一人の山水画家が寺社やアトリエで山水画を制作する過程を、現在までの時点で、延べ30日以上の期間にわたり観察し、このフィールド観察やインタビューの記録、描画過程のビデオ記録などに基づいて、画家の知識や技術、および山水画の制作過程について検討してきた。今年は2年計画の研究プロジェクトの初年度であり、以下の3つの研究を実施中である。研究1では、画家の知識を調べるため、画家がインタビューに応じて話した内容を分類し、カテゴリー化を行った。研究2では、さらに、画家が山水画の描き方を受講生に説明する教授場面で、画家の話した内容を分類し、カテゴリー化を行った。この二つの研究から、山水画に関して画家が持っている知識を多面的に取り出そうと試みた。その結果、知識は「絵の描き方のストラテジー」、「絵の評価基準」、「絵を描くときの心構え」の3つに大きく分類された。研究3では、色紙絵の描画過程の分析を行い、外的制約の役割やアイデア生成時における既有知識の利用の分析を行っている。この研究は、現在データ収集中であるので、まだ結果の報告はできないが、研究1,2で明らかにした知識の内容と関連づけながら、山水画の制作過程を詳細に解明する予定である。
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