2000 Fiscal Year Annual Research Report
人生を語りやすくする旅表現の研究-歌詞分析を活用して-
Project/Area Number |
12871019
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
北山 修 九州大学, 人間環境学研究院, 教授 (80243856)
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Keywords | 流行歌 / 歌詞 / 旅 / 人生 |
Research Abstract |
本年度は、現在のところ、昭和35年〜昭和54年のヒット曲の中で旅を歌った歌詞を収集している。収集した歌の歌詞を、作詞者の性別、時間経過、帰りたい感情の有無、目的地喪失感の有無、同伴者の有無、涙の有無などについての検討を行っている。旅の歌は、人生そのものをテーマにした歌と、失恋後の立ち直り過程をテーマにした歌に大別されたが、現段階では人生そのものがテーマとなっている旅の歌に限って検討を進めている。 それらの歌が、私たちの人生観を物語っていると考えると、以下のことが示唆される。人生という旅の出発点付近では、後に辿り着くであろう目的地(夢・希望の虹・未来・誰も探しに行かないもの・ユートピア)に期待を膨らませて、帰りたいという感情は殆ど感じないが、人生の中盤から後半にかけては、目的地の不在を知ってその旅は"あてのない旅"となり、過去の出発点であるあの頃(幼い頃・ふるさと・母親)へ帰りたいという思いにかられるのだろう。そこでの人生の"辛さ"をどう感じるかには、旅の同伴者、もしくは、別々の道を歩いていてもどこかにいる仲間の存在が大きく関わっており、同伴者や仲間意識がある歌では、帰りたい感情や目的地喪失感、涙(泣きたい気持ち)が歌われない傾向にあった。しかし、一方では、人生後半の同伴者のいない一人旅を歌いながらも、辛さ(涙)を見せない歌もあったが、それらは歯を食いしばって我慢していたり、"流れもの"を自覚し、"いてもいいだろこんな奴"と開き直り、一人旅の自分を受け入れている歌であった。帰りたい感情や目的地の喪失感、一人旅であることをどのように受け入れるかということも、人生の"辛さ"の感じ方に関わっているようである。 現段階は、この年代に限られた分析にとどまっており、年代毎の分析などを含めた全体的な結果は、残りの年代の歌詞収集と分析を待ってから検討したいと考えている。
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Research Products
(1 results)