2000 Fiscal Year Annual Research Report
16・7世紀における施餓鬼図の受容とその社会史的背景についての歴史図像学的研究
Project/Area Number |
12871042
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Research Institution | Kyoto University of Education |
Principal Investigator |
西山 克 京都教育大学, 教育学部, 教授 (30145825)
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Keywords | 甘露図 / 熊野観心十界図 / 施餓鬼 / 神霊 / 招魂儀礼 |
Research Abstract |
韓国の美術史学界で「甘露幀」と呼ばれる一群の絵画がある。前近代社会の朝鮮半島において、死者の霊魂に甘露の法味を授ける儀礼のために奉懸された-とおぼしき極彩色の絵画である。他方で、中近世移行期(16・7世紀の境)の日本社会で制作された「熊野観心十界図」と呼ばれる絵画がある。施餓鬼法要の情景を画面の中央に描いて、六道輪廻からの霊魂の救済を企画した絵画である。私は「熊野観心十界図」が、日本社会に流入した「甘露幀」の翻案によって成立したと考えている。それゆえ、この両者と、その受容された社会的・文化的なコンテクストを対比することによって、死者の霊魂の全社会的な管理のありようについての、日本社会と朝鮮社会との類似点と相違点が究明できると考えている。 平成12年度は、「甘露幀」についての研究書と図録の収集に努め、同時に韓国語文献の邦訳を行った。近年、韓国内の出版社から、「甘露幀」研究にエポックを画す、極めて大部、かつ良質の図録が刊行されている。それを入手し、韓国語に堪能な学生の協力を得つつ解説の邦訳を行った。本来は12年度内に韓国の関連博物館・寺院を調査する予定であったが、準備および日程的な齟齬があり、これは13年度に持ち越すこととした。一方で、日本国内に数10点伝来する「熊野観心十界図」の作例についても、画像の収集に努めた。また、施餓鬼会及び熊野関係の史料を蒐集するため、東京等の研究機関をたびたび来訪し、史料の筆写、情報の収集を行った。同時にすでに刊行されている古記録類から史料を抽出し、ファイルに収めた。 平成13年度は韓国内に現存する「甘露図」の調査を行い、比較研究の成果を報告する予定である。
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