2001 Fiscal Year Annual Research Report
戦国楚系文字資料による漢語史再構のための予備的研究
Project/Area Number |
12871052
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
大西 克也 東京大学, 大学院・人文社会系研究科, 助教授 (10272452)
|
Keywords | 文字学 / 出土資料 / 楚文字 / 中国語学 / 戦国時代 / 上古音 |
Research Abstract |
本研究は、出土資料の相互比較による漢語語法史、語彙史再構築を展開するための予備的研究として、正確な解読に困難の大きい楚系文字資料を取り上げ、その集成、正確な釈文の作成、資料の性格の探求、基礎的語彙の調査ならびに他地域出土資料との比較を目指すものであるが、平成13年度に行なった実績は以下のとおりである。 昨年に引き続き、楚簡解読の基礎となる字釈関係論文のリストアッブと、字釈の収集の作業を行なった。今年度の主たる対象は、楚文字に関する論文がしばしば掲載される定期刊行物で、『文物』『江漢考古』等16種をリストアップし、これらに関しては論文内容を問わずしらみつぶしに調査を行ない、遺漏のないことを図った。また『中国考古学年鑑』等により、上記以外の刊行物に掲載される論文も収集し、約350点を得ている。昨年度の調査対象である各種論文集については、調査できなかったものや、新たに出版されたものもあり、逐次補ってゆきたい。 以上の作業のほか、楚文字自身に対する研究も進めている。「害」字は上古音が祭部とされるにも関わらず、古文字資料においては魚部の字と密接な仮借、諧声関係を有している。今年度は「論古文宇資料中的"害"字及其讀音問題」を執筆し、「害」は本来魚部に所属する字で、「傷害」を意味する字ではなかったこと、曾侯乙墓竹簡等の・春秋戦国交代期に「害」が元部の「〓(憲)」と混用されるようになったことを契機として、祭部の音を獲得したこと、楚系文字に見られる「害」字の奇妙な形体が、実は「害」と「旡」との合体字であることなどを考証した。本論文は来年度刊行の『古文宇研究』第21輯に掲載が決まっている。
|
Research Products
(1 results)