2000 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
12871056
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Research Institution | Meisei University |
Principal Investigator |
加藤 めぐみ 明星大学, 一般教育, 助教授 (30247168)
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Keywords | オーストラリア / 日本 / 印象(イメージ) / オセアンア / ポストコロニアル |
Research Abstract |
第1・2次大戦以前は殆ど民間レベルの接触がなかったため、オーストラリア(以下豪)文学に見る日本人のイメージはステレオタイプ的なものが多かった。だが戦争で初めて対峙し、敵にせよ、人間として初めて具体的な印象が表されるようになる。本年度はこの戦争文学を研究、中でもカウラの日本人兵捕虜脱走事件と、連合国占領軍の日本進駐をテーマにしたものを特に取り上げた。 このニューサウスウェールズ州カウラでの日本人兵捕虜脱走事件(1944)は、自国で特殊な状況のもとに日本人を観察するというだけでなく、その決起事件により、「戦陣訓」に見られる捕虜否定の精神や集団と個人の関わり等、日本人の考え方、感じ方を豪側に知らしめる大きな契機となった。この事件は、終戦直後から現在に至るまでフィクション・ノンフィクションともに小説家、ジャーナリストらによって多く取り上げられており、異文化交流、相互理解を構築する上での知識や認容の困難さ、その必要性と重要性がテーマとなっている。また戦後の、占領軍の一部であった豪軍による日本進駐は、日本における豪側の直接的交流、印象、その影響を扱った現実味のあるフィクションを多く生む。これらの作品は占領者-被占領者という力関係の偏りにより、ともすれば一面的になり易いが、その一見破壊的で不毛な関係の中に、相互関係を作り上げる上での異文化理解の必要性、試行錯誤の上での双方における理解の深まりが強調され、戦後の豪日関係の萌芽を示すものとなっている。 以上の研究による成果発表:11項で挙げた論文の他、所属研究機関や川崎市、浦和市 の市民講座で取り上げ解説した。また豪文学史に関わる研究であることより、Gブレイニー教授の『オーストラリア歴史物語』を明石書店より翻訳出版した。(H12年9月)
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Research Products
(1 results)