2001 Fiscal Year Annual Research Report
図書館を素材とした教育福祉法学の学問的可能性に関する研究
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12872005
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Research Institution | Aomori University of Health and Welfare |
Principal Investigator |
木幡 洋子 青森県立保健大学, 健康科学部, 助教授 (50315561)
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Keywords | 学校図書館 / 患者図書館 / 教育人権 / 福祉権 / 生涯学習社会 / 情報化社会 |
Research Abstract |
本研究は、生涯学習社会・高齢化社会という日本の大きな変化のなかで、教育人権保障のために必要な整備内容を確定し、それを法的整備として提言しうる法学的手法を探求するものである。素材は学校図書館と患者図書館である。 今年度においては、具体的には、学校図書館整備を実定化していった実際の動きを調査し、権利としての欲求が法的次元に止揚していく過程から、権利内容の確定から法整備、そして行政実務へと権利が実現していくダイナミズムの淵源を探る作業を行なうことを目標とした。そのため、市川市における学校図書館システムについて、そのシステムが必要だと認識されるに至った経緯、当該システムを行政、住民がどのように認識し、実際の整備へと結びつけていったかを調査した。調査は、石原孝一もと教育センター研究員により残されている会議、研究資料を、平成元年から平成4年度までのものについて精読し、さらに石原氏への補充質問により事実を確認するという作業、および読書と学校図書館の意味を住民に知らしめたと思われる山口重直もと教育長およびシステム構築における実務にあたった小林路子市川市教育センター主事からの聴き取りを主とした。その結果、生涯学習社会において、市が保有する情報提供機関である公共図書館と学校図書館を、小さな市民としての子どもと成人市民の両者に対して機能的な利用を進める動きには、20年以上の学校教育、住民教育の蓄積があることが判明した。また、蓄積を現実のシステムにつなげるにあたっては、民主主義を理解した有能なリーダーと行政マンの働きがあり、この働きにより、個人の業績ではなく市川市全体の動きとして、情報を個人の人生と市全体の公益に役立てるという"情報観"が育っていっていることを明らかにすることができた。ここから、権利は市民から発生し、市民が育てるというメカニズムを抽出することができた。患者図書館については第1次調査を完了している。来年度の課題は、制度化における法理論の役割の明確化である。
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