2001 Fiscal Year Annual Research Report
無料ソフトウェアの経済学―Linuxに見られる非営利性とビジネスモデル
Project/Area Number |
12873005
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Research Institution | Musashi University |
Principal Investigator |
杉本 伸 武蔵大学, 経済学部, 助教授 (90262138)
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Keywords | Liunx / リナックス / オープンソース / 非営利 / インターネット / ビジネスモデル / シリコンバレー・モデル / 知識創造 |
Research Abstract |
本年度は、次の項目について検討した。 (1)技術的運用:昨年度購入したPCにおいて、LinuxのメジャーなディストリビューションであるRedhatをインストールし、実際にメール並びにWWWのサーバとして運用した。同マシンは、半年以上、常にオンラインで稼働させたが、全くトラブルは発生はしなかった。技術情報やセキュリティ情報も、高い頻度でメーリングリスト等を通じて知ることができるため、随時ソフトウェアを更新することができるなど、安定性とセキュリティの点での性能が非常に高かった。 (2)ビジネスモデル:Linuxを中心としたビジネスモデルで有効なものは、大きく分けて次の2つであることが了解できた。一つは、Linuxをもとに他の有用なソフトウェアを付加して作られるディストリビューションを商品化している企業モデルである。国際的に、RedHat社が有名であるが、現在、日本国内の企業を含めて、非常に多くのディストリビューション企業が存在する。二つ目は、Linuxによって構築されたサーバシステムの運用・保守・サポートなどを行う企業である。(1)で示したように、Linuxは安定性とセキュリティに優れているため、中小規模のサーバを構築するのに適しており、それをサポートするビジネスが盛んになっている。 (3)オープンソースを生み出す社会的条件:企業組織や営利的動機などにとらわれずに高性能なソフトウェアを作り出しているオープンソース型の共同作業についての定性的な分析を行った。そこで作用しているのがネットワークを通じて知識創造を行う新たな知識創造モデルである。そして、その背後に存在しているインフラとして、シリコンバレー・モデルに典型的に見られるような大学などの非営利的組織が重要な意味を持っていることが了解できた。 (4)オープンソフトウェアの活用事例の調査:今年度はLinuxを国家的に重視している中国で、北京市を中心に実地調査を行った。北京大学・清華大学・北京工業大学などの大学、RedHatの中国語版とも言えるディストリビューションを制作しているRedFlag(紅旗)社などを調査し、大学でのLinUXの活用状況や中国独自の開発体制を調査した。同調査結果については、近日中に武蔵大学の紀要にて公表する予定である。
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