2000 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
12874083
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
大谷 文章 北海道大学, 触媒化学研究センター, 教授 (80176924)
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Keywords | 半導体粉末 / 光触媒反応 / 12族元素硫化物 / 硫化水銀 / 天然鉱物 / 辰砂 / ピペコリン酸 / エナンチオ過剰率 |
Research Abstract |
半導体粉末による光触媒反応は環境浄化やエネルギー変換だけでなく、従来の反応系で得られないような特色のある有機化合物の変換反応に利用することが可能である。これまでに、種々の有機化合物の光触媒反応が知られており、われわれは、ある種のアミノ酸を基質とすると硫化カドミウム粉末上で立体選択的な反応が進行することを見いだしている。ところで、12族元素のなかでは、亜鉛とカドミウムの硫化物の光触媒作用については多くの報告があるが、硫化水銀については30年以上前にひとつの報告があるだけである。硫化水銀は他の金属硫化物と同様に半導体として光応答することが考えられるとともに、その特異な結晶構造(水銀と硫化物イオンがらせん構造をとる)のために不斉な固体であることから、これが光触媒反応の選択性に影響することが期待される。辰砂(cinnabar)として知られる硫化水銀の天然鉱物(単結晶あるいは双晶)を試料とし、硫化カドミウム系で検討を行ってきたリシンの光触媒環化反応によるピペコリン酸の生成系について、その活性を調べたところ、きわめて低いものの光触媒活性をもつことが明らかになった。リシンからのピペコリン酸の生成反応では、リシンの酸化(正孔)段階と環状シッフ塩基中間体の還元(励起電子)段階の両者において不斉結晶表面での立体選択が期待できる。種々の天然鉱物、あるいは市販硫化水銀粉末を用いてDL-リシンの反応を行い、反応系に残存するリシンと生成したピペコリン酸の光学純度をキラルカラムを備えたHPLCによって分析したところ、天然鉱物の一部でピペコリン酸のエナンチオ過剰率が誤差範囲をこえて観測される場合があった。現在、単離したピペコリン酸について円偏光二色性スペクトルによる解析を行っている。
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