Research Abstract |
本研究は,原生動物などの微生物を高密度に培養すると自律的に発生する生物対流について,原生動物が持つ走性を利用してその流れを制御し,工学的に利用することを目的とする. 今年度は,負の走電性を利用して,生物対流の下降流を制御することが可能かどうか,基礎実験により確かめることを中心に行った.生物対流を制御するための実験プールとして,底部一面を炭素製陽極とし,上部に2.5mmピッチで15極の炭素製陰極を並べた長さ42mm,幅3mm,深さ7mmの実験プールを試作し,陰極アレイのうち1本の陰極に-電場を印加して生物対流の変化挙動を観察した結果,印加直流電位勾配が0.12V/mm以上になると,-電場を印加した電極の下部に下降流を発生あるいは移動させることができることが明らかになった.電場を印加することによる対流の変化挙動は,大きく3つの領域に分けることができ,電位勾配が0.12V/mmでは電場の印加が元々の生物対流に影響を与えない(自然対流領域),0.12-0.27V/mmでは最初の状態で発生していた生物対流が電場の印加後も継続するが,印加した電極に最も近い位置の下降流が,電極下部へ移動する(対流制御領域),0.27V/mm以上の電位勾配を印加したときは,印加電極の下部に強力な下降流が発生し,その流れにより元々存在していた生物対流は消滅してしまう(強制対流領域),ということが明らかになった. 以上の結果を元に,応用例として,感光性樹脂を用いて直径0.5-3mmの微少水車を製作し,この微少水車を位置制御した下降流により駆動することを試みた.しかしながら,現時点では,電極アレイのピッチが粗く,下降流を微少水車に効率よく当てることができないこと,下降流の流れが弱く,水車を連続的に回転させるにはさらに強い下降流を発生させる必要があることが明らかになった.今後これらの点を改善していきたい.
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