2002 Fiscal Year Annual Research Report
人間のリスク認知特性を考慮した防災投資の経済評価手法の理論構築と認知特性の計測
Project/Area Number |
12875091
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
家田 仁 東京大学, 大学院・工学系研究科, 教授 (90168089)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
寺部 慎太郎 東京大学, 大学院・工学系研究科, 講師 (60302585)
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Keywords | リスク評価 / 防災施設整備 / レベル2地震動 / 耐震性能 / 道路高架橋 / 費用便益分析 / ネットワーク分析 / 保険 |
Research Abstract |
1.家計の保険加入行動の観測による個人的なリスク評価特性計測の再検討 一昨年度行った家計の生命保険・地震保険の加入行動実績からのリスク評価特性の計測方法について見直しを行い,家計のリスク回避的行動をより的確に考慮できるような定式化を行い,評価関数の際推定を行った. 2.成果のとりまとめ 本年度までに,当補助金による研究(上記に示した,保険加入実績によるリスク評価特性の計測,昨年度行った道路高架橋の耐震補強投資を題材とした専門家へのアンケートによるリスク評価特性の計測)に加え,筆者らがこれまでに行ってきた,地震被災,洪水,斜面災害等のリスクに対する防災施設整備の実績を対象に行ったリスク評価特性の計測結果の成果をとりまとめた.その主な成果は以下の3点にまとめられる.(1)明示的な考慮であるかどうかはともかく,本研究で取り扱ったような防災・減災行動においては,意思決定者は,生起頻度と被害額の両者を考慮した枠組みで判断している.(2)いずれのリスクにおいても,意思決定者が主観的に評価する被害額は,通常計算される被害額とくらべ,等倍から最大でも6倍程度に大きく,多くの場合は約2,3倍大きい.また,特定少数の利用者や住民に被害が集中しやすく,全被害アイテムのうち死亡や負傷による被害額の比重が相対的に大きい災害リスクほど,被害額の評価値が大きくなる傾向がある.(3)いずれのリスクにおいても,意思決定者が主観的に評価する生起頻度は,通常計算される生起頻度と,少なくとも等しく,最大で約10倍大きい.特に,生起頻度が小さいほど,主観的に評価された生起頻度ともとの生起確率の比は大きくなる.また,実際の生起頻度がどんなに小さくても,少なくとも供用期間中に一度(あるいは一生に一度)はリスクが発現するものと評価されている.
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