Research Abstract |
本研究では、超微量元素および微量元素の吸収要因を明らかにする目的で、これらの元素の存在形態と栽培した植物中の濃度について調査・検討を行った。 日本各地から採取した12土壌を供試し、全含量、存在形態別として水溶性、クエン酸可溶性、交換性成分の定量を行った。また、供試した植物は約2ヶ月のポット栽培を行った水稲およびチンゲンサイである。測定対象とした元素は、Al, Sc, V, Cr, Mn, Fe, Co, Ni, Cu, Zn, Ga, Ge, Rb, Sr, Y, Zr, Nb, Mo, Ag, Cd, Sb, Cs, Ba, La, Ce, Pr, Nd, Sm, Eu, Gd, Tb, Dy, Ho, Er, Tm, Yb, Lu, Hf, Ta, W, Tl, Pb, Bi, Th, Uの合計44元素であり、酸分解後に、ICP-MSを用いて測定を行った。 元素の存在形態は、水溶性成分が他の成分よりも少なく、また、Rb, Sr, Cs, Ba, Cd, Tlはクエン酸可溶成分よりも交換性成分の量が多いこと、Be, V, Fe, Co, Cu, Y, Zr, Nb, Mo, Sb, Hf, Ta, W, Bi, Thは逆の傾向が認められた。なお、その他の元素は一貫した傾向は認められなかった。 植物中の元素濃度は、測定元素の殆どでチンゲンサイが水稲よりも高く、特に希土類元素では10倍以上となった。また、植物体の元素濃度と土壌中の濃度比(移行係数)が高い元素は、Mo, Rb, Cd, Sr, Tl, Cs, 低い元素は希土類元素やTh, U, Zr, Hfなどであることが分かった。 植物中の元素濃度を支配する要因としては、全含量よりも交換性成分のほうが強く作用する元素が多いことが分かった(Rb, Y, Nb, Ba, 希土類元素, U)。しかし、元素吸収は、形態別の元素濃度だけでは説明がつかない場合が殆どであり、他元素との相互作用や実際に土壌溶液に溶けた成分を考慮する必要があると考えられた。
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