2000 Fiscal Year Annual Research Report
「アミノ酸の新しい薬理作用とそのシグナル伝達機構の解析」
Project/Area Number |
12876030
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Research Institution | Tokyo University of Agriculture and Technology |
Principal Investigator |
矢ヶ崎 一三 東京農工大学, 農学部, 教授 (20166474)
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Keywords | アミノ酸 / アミノ酸輸送体 / シグナル伝達 / 薬理作用 / 癌細胞浸潤 |
Research Abstract |
我々は,肝癌細胞においてアミノ酸が受容体ないし輸送体を介して情報を伝達し,細胞機能を修飾している可能性を見いだした.その過程でアミノ酸の新しい薬理作用としての肝癌細胞浸潤抑制作用を見いだした.そこで本研究では,アミノ酸の輸送体に焦点を絞り,肝癌細胞とは別の癌細胞(メラノーマ細胞)を用いて,(1)その増殖と浸潤に対するアミノ酸の作用解析,(2)アンタゴニストを用いた輸送体の関与の検討,(3)阻害剤を用いたアミノ酸のシグナル伝達経路の推定,(4)輸送体のタンパク質発現と遺伝子発現の解析を主に細胞培養系で行い,これらのアミノ酸の浸潤抑制作用とその機構が肝癌細胞に特異的ではなく,癌細胞全般に敷衍できるかどうかを検討し,アミノ酸が保有する新しい薬理作用と作用様式の存在の可能性を探ることを目的とする. 癌細胞として,マウス由来のB16-F10メラノーマ細胞(以下,単にB16細胞という)を用いた.まず,B16細胞の培養系における増殖能と浸潤能検定系の作製を試みた.その結果,増殖能はWST-1法で,浸潤能はB16細胞をマトリジェル層上に播種し層下にもぐり込んだ癌細胞の数を計測する方法で測定することとし,それぞれの最適実験条件を検討した.次に,肝癌細胞の増殖と浸潤を抑制するアミノ酸を選んでB16細胞の増殖と浸潤に対する作用を検討したところ,いずれのアミノ酸もB16細胞の増殖と浸潤を抑制した.そのうち,浸潤抑制作用の強かったグリシン(Gly)の輸送体遺伝子がB16細胞で発現しているかどうかを検討したところ,少なくとも一種類のGly輸送体遺伝子の発現を認めることができた.さらに,マウスB16メラノーマ細胞転移モデルを作製するための基本的な実験条件を検討した. 今後,in vitroでは輸送体アンタゴニストおよびシグナル伝達阻害剤を用いてアミノ酸のシグナル伝達経路の推定を,in vivoではB16細胞の増殖・転移に対する実験も行う予定である.
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