2001 Fiscal Year Annual Research Report
「アミノ酸の新しい薬理作用とそのシグナル伝達機構の解析」
Project/Area Number |
12876030
|
Research Institution | Tokyo University of Agriculture and Technology |
Principal Investigator |
矢ヶ崎 一三 東京農工大学, 農学部, 教授 (20166474)
|
Keywords | 肝癌細胞 / メラノーマ細胞 / 細胞運動 / グリシン / 癌転移 / 癌浸潤 |
Research Abstract |
ラット腹水肝癌細胞AH109A細胞の増殖と浸潤に対する各種アミノ酸の作用解析結果から、最も簡単な構造を有するグリシン(Gly)が肝癌細胞の浸潤を抑制することを見いだしていた。そこでGlyに着目し、別の癌細胞であるマウス皮膚由来黒色腫細胞B16F10メラノーマ細胞を用いて、その増殖能と浸潤能に対する作用と作用機構を解析することを目的とした。B16F10細胞は、10%牛胎児血清を含むダルベッコ変法イーグル培地(DMEM)中で維持培養した。実験に使用するときには無血清のGly不含DMEM培地を対照培地とし、これにGlyを加えたものを試験培地とした。増殖能はWST-1法で測定した。浸潤能の測定は、セル・カルチャー・インサートに装着された小孔を有するフィルターに細胞外基質であるマトリゲルをコートし、添加した癌細胞がマトリゲルを浸潤し、フィルター下面に移動した細胞数を計測することにより行った。Glyは増殖に対し4mMまでは有意な抑制効果は認められなかったが、浸潤に対しては1mMまで濃度依存的に抑制し、その効果は4mMまで維持された。すなわち、Glyは増殖に影響を与えない濃度で浸潤を抑制し、肝癌細胞のみならず、メラノーマ細胞においても浸潤抑制効果を示すことが明らかとなった。癌細胞の浸潤過程には、(1)基底膜への接着、(2)基底膜成分の分解、(3)基底膜下への移動の三ステップがあるので、それぞれに対するGlyの効果を検討したところ、(3)の運動能を抑制することが見いだされた。そこで、癌細胞自身が産生・分泌し、自らの運動性を刺激する因子であるAutocrine Motility Factor(AMF)に着目して、RT-PCR法でmRNAレベルでの発現を確認し、その発現量を比較したところ、Gly添加によりAMF-mRNA発現量は47%減少した。このことから、Glyの浸潤抑制作用は、少なくとも一部はAMFを介した運動能の抑制によるものであることが示唆された。
|
Research Products
(1 results)