2001 Fiscal Year Annual Research Report
糖類の酸素酸化反応における『コンフォーメーション支配』概念の確立
Project/Area Number |
12876039
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
松本 雄二 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 助教授 (30183619)
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Keywords | 酸素 / 自動酸化 / 多糖類 / コンフォーメション / パルプ / 漂白 |
Research Abstract |
アルディトール類やグリコシド類は、官能基としては酸素と活性なものを分子中に有しない。したがって、これらの化合物が酸素酸化されるためには、共酸化機構(反応系内に酸素と活性な物質が存在し、それと酸素との反応によって生成した活性酸素種が糖を酸化する)か連鎖的な自動酸化機構が考えられる。他に酸素と反応して活性酸素種を生成する物質が反応系に含まれていない場合の、酸素による酸化分解の容易さを比較すると次のようになった。 キシリトール>イノシトール》メチル-β-D-キシロシド≒メチル-β-D-リボシド>メチル-β-D-グルコシド 単純なアルディトール類や環状アルディトール類に比べて、グリコシド類の酸化分解は遅い。グリコシド類の中でも、約120℃ほどの温度で酸化分解が進行するメチルキシロシド、メチルリボシドに比べると、メチルグリコシドの分解はさらに遅い。しかも、メチルグルコシドの場合は、自動酸化の場合に見られる反応の誘導期が見られない。これらのことから、メチルグルコシドのアルカリ中での酸素酸化は、自動酸化反応が長く連鎖的に続くのではなく、グリコシド結合がアルカリ加水分解することによって生成したグルコースが酸素と反応して活性酸素種が生成し、それが他のメチルグルコシドを酸化分解するものであり、反応機構的には一種の共酸化であると結論した。アルディトール類、あるいは、グリコシド類といった官能基としては同種のもののみからなる化合物類の中でも、酸素酸化反応の反応性が大きく異なる化合物が存在することから、糖類の酸素酸化反応は分子の立体的な形態に大きく影響されることが示唆された。一方、上記の糖の酸化分解には共通して、反応後期に分解が明らかに遅くなることが確認された。これは、酸化反応の主体である活性酸素種が、すでに反応系内に蓄積している糖の酸化分解物によって効果的に消費されるためであると考えられた。このことは、酸素漂白における糖の分解を抑制する方法に示唆を与えるものである。
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Research Products
(1 results)