2000 Fiscal Year Annual Research Report
イエウイルス(高分子シセル型ベクター)を用いた細胞内遺伝子導入法の確立
Project/Area Number |
12877221
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
川口 浩 東京大学, 医学部・附属病院, 講師 (40282660)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
片岡 一則 東京大学, 大学院・工学系研究科, 教授 (00130245)
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Keywords | 遺伝子導入 / ミセル / ウイルス |
Research Abstract |
本研究の目的は、臨床での遺伝子治療に応用しうる高分子ミセル型ベクターの開発である。高分子ミセル型ベクターは新しい発想の非ウィルスベクターで、ポリエチレングリコールとポリカチオンの、溶解性の異なる2種類の高分子鎖を連結したブロック共重合体を材料とし、この高分子鎖とDNAを混合することによって形成されるポリイオンコンプレックスミセルである。このベクターの物理化学的性質、生物学的機能は以下のようにまとめられる。 1.ミセルは粒径約90nmと、ウィルスとほぼ同等の大きさ、構造をとる。 2.DNAはポリアニオンとの交換反応により外部に放出され、DNAの構造は保たれている。 3.ミセルの大きさ、構造はDNAの種類、分子量に関わりなく一定である。 4.ミセルに内包されたDNAはヌクレアーゼに対する非常に高い抵抗性を有する。 5.培養細胞に対する遺伝子導入では、約70%の細胞に遺伝子発現が認められる。 しかしながら一方、今後の課題として、遺伝子導入効率はまだウィルスベクターに及ばない細胞によって導入効率が大きく異なる、現状では細胞選択性がない、などの問題点が残されている。以上の問題点を解決すべく、現在ポリカチオンとしてポリエチレンイミン、ポリジメチルアミノエチルメタクリレートをそれぞれ用いたブロック共重合体の合成にほぼ成功しおり、遺伝子導入効率の著しい向上が期待される。また、遺伝子導入効率の向上、細胞選択性獲得の目的で、ミセル外郭へのリガンド連結を進める予定である。更に、蛍光標識したDNAを用いたミセルでのFRET現象を確認している。これはミセル内核でのDNAの凝縮を直接証明するものであり、これまで未だ報告されていない手法である。遺伝子ベクターとして最適な構造決定のための有益な情報を得る手段として、今後さらに検討を進めていく予定である。
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