2001 Fiscal Year Annual Research Report
在宅医療において義歯へ 抗菌効果を与える方法・材料の開発
Project/Area Number |
12877317
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
寺田 善博 九州大学, 歯学研究院, 教授 (30038898)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
根津 尚史 九州大学, 歯学研究院, 助手 (40264056)
永留 初実 九州大学, 歯学研究院, 助手 (30284516)
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Keywords | 義歯用レジン / リゾチーム / 牛血清アルブミン / 吸着 / 唾液 |
Research Abstract |
平成12年度の実験から歯科用材料に応用した口腔内抗菌性タンパク質が抗菌性を示すということがわかった。その結果を受け、平成13年度は実際に患者用に使用されている義歯用レジンとタンパク質との相互作用について調べた。実験1ではその吸着平衡到達時間を、また実験2では吸着平衡実験によりレジン粉末へのタンパク質の吸着状態を推測した。 (実験1) 1、義歯用レジン粉末をφ0.1mmの篩に掛け、その粉末を8本のチューブに各0.2mgを計り取った。 2、そのチューブに口腔内抗菌性タンパク質であるリゾチーム(LYZ)、また最も一般的なタンパク質の一つである牛血清アルブミン(BSA)、それぞれの100μg/m1溶液を各チューブに加え2、4、6、8、16、24時間後のレジン粉末に対する各タンパク質の吸着量を測定した。 (実験2) 実験1と同様のチューブに20〜100μg/mlの各タンパク質溶液を加え、実験1で平衡に達したとわかった時間、つまり4時間後のレジン粉末へのタンパク質吸着量を測定した。 以上の2種類の実験からLYZはレジン粉末に単層吸着をし、その吸着力はBSAに比較して非常に大きく、口腔内で義歯への吸着により、ある種の細菌に対して抗菌力を示している可能性を示した。近年の成人では原因ははっきりしていないが、唾液中のLYZ量は減少傾向にあり、1Lの唾液中に数十mgと言われている。しかし、これは濃度に換算すると今回用いたタンパク質濃度の範囲にあり、その数十%がレジンに吸着しており、義歯に吸着した唾液中のLYZは義歯に吸着する一部の細菌に対して抗菌作用が期待できる。一方、唾液中には他の抗菌性タンパク質をはじめ、様々なタンパク質が存在するが、その相互作用についてはわかっていない。今後はそれらのタンパク質の相互作用を調べ、口腔内の他の抗菌性タンパク質も含めた義歯レジンヘの積極的な吸着を可能にし、より効果的な抗菌作用を得られる方法を確立しなければならない。また各抗菌性タンパク質の細菌への抗菌作用機序は異なるため、特に義歯使用者で問題となり、肺炎の原因にもなりうるカンジタ菌に対して作用しうる環境を確立しなければならない。
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