2001 Fiscal Year Annual Research Report
慢性期意識障害患者の基本味・光・音の刺激と覚醒に関する研究
Project/Area Number |
12877405
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
松村 悠子 名古屋大学, 医学部, 教授 (30165873)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
前川 厚子 名古屋大学, 医学部, 教授 (20314023)
安藤 詳子 名古屋大学, 医学部, 助教授 (60212669)
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Keywords | 意識障害 / 味覚 / 味覚刺激 / 経口的食事 |
Research Abstract |
意識障害患者は、JCS(3-3-9度方式)による10レベルとGCS(Glasgow Coma Scale)の合計9点の患者を13名選定した。13名の患者に対して室温26℃、湿度45%に環境を整え、基本味である甘味(砂糖)、塩味(塩)、酸味(酢酸)、苦味(コーヒー粉末)を舌の中央に一滴注入し脳波を5分間づつ記録した。その際、先の味が完全に消去されるよう舌を巻綿子で3回拭き取った。又実験中の誤咽で全身緊張(筋電図変化)が起ったり、舌を拭くことでの脳波変化については、反応が安定するまで待つ必要があり測定時間にやや誤差が生じた。脳波電極は19ヵ所(左右側頭部、頭頂部、頭底部、前頭部、後頭部)で国際電極配置に準じた。脳波解析プログラムを用い1.6-30Hzフイルターで分析した。また、心電図、筋電図のアーチファクト除去をした。 結果:味覚刺激前の脳波と各味覚刺激毎の脳波では、Total Powerは明らかに味覚刺激後が増強していた。更に脳底部における反応は最も強く現れ1.5倍になっていることが判明した。味覚刺激の強さについては酸味が最も強く見られ、次いで塩味、苦味、甘味の順に反応した。実験前後の徐波と活性脳波の比較を行ったところ、検定では明らかな差ではないが、3人の患者に実験前と比較して、明らかな徐波の低下が見られた。 考察:重度の意識障害のある患者において、味覚の感受性反応は無いのではないかとされていたが、今回の実験結果から、確かな刺激に対する反応がみられた。これらのことは、意識障害患者が経口的に食事をとることは、食物の味はかなり感受され脳への適切な活性化につながっていることを示していると言えよう。ただし反応は後頭部から脳底部にかけての反応が大きく、前頭部、側頭部の反応はやや低くなった。このことから経口的食事が即意識障害患者の意識回復に直結するとは言えないが、経口的に食事を切り替えたことで、患者の表情に緊張感が出現し始めたという看護の事例報告などから、味覚が意識に影響していることは明らかと考えられる。
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Research Products
(1 results)