2001 Fiscal Year Annual Research Report
未告知がん患者の家族への現象学的アプローチのこころみ
Project/Area Number |
12877410
|
Research Institution | Fukui Prefectural University |
Principal Investigator |
牧野 智恵 福井県立大学, 看護福祉学部, 講師 (60161999)
|
Keywords | がん / 家族 / 現象学的アプローチ / 終末期 / V.E.フランクル / M.シェーラー / M.ブーバー / 他社了解 |
Research Abstract |
昨年の2事例に引き続き、今年はさらに3事例の家族へのインタビューを行った。 なお、本研究に用いた「現象学的アプローチ」の本質態度(方法論)である「直観(純粋直観)」を参与者に返すというアプローチは、「がん患者の家族」のみならず、苦悩の状況下にいる「難病患者への看護(ケアリング)」に有効な結果も見られた。 未告知がん患者の家族の世界を「了解」、「直観(純粋直観)」、「価値」を見出す、という三つの概念については、M.ブーバーの<われ-汝>、M.シェーラーの<共同感情>、V.E.フランクルの<態度価値>の理論をふまえ考察していく予定である。 これまでの参与者との面接の分析から、程度の差こそあれ、家族が面接を通して「今の自分が何にとらわれていたか」「何に不自由を感じていたか」ということに気付き始め、自由になっていく様子が見られた。 研究参与者が面接を通して「自由になっていく」とは、「人間の意志の自由とは衝動『から』責任『に向かって』の、つまり良心の所有『に向かって』の自由なのである」(V.E.フランクル『識られざる神』、1962年、みすず書房)で示される『自由』の意味を指す。つまり、未告知がん患者の家族は、医師や周囲の情報から「告知すると患者がガックリしてしまうに違いない」「自殺するかもしれない」という因襲や一般的常識による解釈から常に自分自身の良心に対して不自由な状況であり、大切な家族に「責任」ある態度をとれない状況であった。そういった状況下で、ありのままの家族の世界を見て直観しその直観を返すというアプローチによって、家族は「本当は患者と素直に向き合って話をしたい」という「自分の良心の所有『に向かって』の自由」を取り戻す様子が見られたということである。 このように、告知できない状況下で苦悩の只中にいた家族へに、「ありのままの家族の姿を見て、聴く」といった現象学的アプローチを行うにあたり、M.ブーバーの<我-汝>の関係、あるいは、M.シェーラーの<共同感情(同情)>による「他者了解」が重要な態度であった。 今後、さらにV.E.フランクル、M.シェーラー、M.ブーバーの思想理解のために各研究会に参加し、考察を深める予定である。
|
Research Products
(1 results)