2000 Fiscal Year Annual Research Report
聾学校における文字言語習得のための教育プログラムに関する研究
Project/Area Number |
12878037
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
谷本 忠明 広島大学, 教育学部, 助教授 (90144790)
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Keywords | 聾学校 / 文字言語 / 教育プログラム / 聴覚障害児 / ひらがな文字 / 読み書き |
Research Abstract |
本研究は、聾学校幼稚部幼児および小学部低学年児におけるひらがな文字の習得に関する基礎的資料を得ることを目的とし、全国の聾学校幼稚部を対象とした文字の使用に関する調査および聾学校年中児から小学部1年児童までを対象とした、ひらがな文字の読み書きに関する研究とで構成した。前者については、全国の襲学校幼稚部98校を対象として、使用されている話しことば・書きことばに相当するコミュニケーション手段、ひらがな文字の読みの指導、書きの指導の内容、また、幼児が文字(書記言語)に接する環境などについて質問紙で尋ねた。多くの学校では、自然の習得に任せるという方針で臨んでいることが示されたが、約半数においては、ひらがな文字の読みの指導が部として行われていることが示され、また、書きの指導も約3分の1の学校で行われていることが示された。幼児の文字環境としては、絵本や日記が広範囲に使用されていることが示され、これらを文字の読み書きにどのようにつなげていくかが検討課題であると考えられた。 後者については、86名の年中児、年長児、小学部1年児を対象に、国立国語研究所が健聴児を対象として実施したひらがな文字の読み書きの調査を参考に、個別に実施した。ここでは、ひらがな文字71文字を用い、その読みと書きについて調査した。あわせて、音節の分解・抽出課題を実施し、読み書きできる文字数との関連や、聴力などの個別要因と読み書きできる文字数との関連性についても検討した。その結果、年長段階で読み書きがほとんど完成され、音節の抽出・分解得点との相関が高い事が示された。また、母音に近い行や、自分の名前に含まれる文字から読み書きできるようになるなどの傾向が見られるとともに、聴覚障害児特有の誤りも見られた。さらに、使用する手指モードの違いによる習得度の違いや、聾学校での教育年数が書ける文字と相関が高いことなどが示された。
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