2000 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
12878074
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
高村 秀一 名古屋大学, 工学研究科, 教授 (40023254)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大野 哲靖 名古屋大学, 工学研究科, 講師 (60203890)
津島 晴 横浜国立大学, 工学部, 助教授 (90171991)
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Keywords | リュードベリ原子 / 疑似音波 / プラズマ再結合 / 非接触プラズマ / 多体的相互作用 |
Research Abstract |
最近、プラズマの体積再結合による、高密度の高リュードベリ原子群の生成が報告された。高リュードベリ原子の特徴は通常の気体原子と比較して十倍〜数百倍の原子半径を持ち、大きな双極子モーメントを有することである。このため、高リュードベリ原子群中での音波伝搬を計測することは、高リュードベリガス媒質の多体効果としての物性を調べるために有意義であると考えられる。高密度の高リュードベリ原子群は数mTorr〜数十mTorrのガス圧において存在する。このため本年は、高リュードベリ原子群中の音波伝搬特性を調べる前に通常気体中での低ガス圧下のいわゆる擬似音波の伝搬特性を調べる点に主眼を置いた。 音源はピエゾ素子で、周波数40kHzのパルス電圧を3周期入力することによって音波を発生させ、コンデンサーマイクロフォンで検出する。音源とマイクロフォンとの距離dは、マイクロメータによって変化させることができる。Ar、He、N2の3種類のガスを採用した低ガス圧でS/Nを上げるためピエゾ素子の共振周波数を用い、信号をディジタイザに取り込んだ後、極めて多数のデータ数にわたって平均化し、ノイズを極力低減した。 実験領域を音の伝播形態の違いによって、A、B、Cの3つに分類する。領域A:気体分子間の平均自由行程λmfp≪音の波長かつλmfp≪d。通常の音波伝搬が観測される領域。平面波を仮定すると、位相速度や減衰定数が音の伝搬距離に依らず一定となる。領域B:10λmfp>かつλmfp<d。気体を連続体としてみなせない領域。領域C:λmfp>d。音源からマイクロフォンまで、気体分子間衝突なしに音が伝搬する。この領域の音波を擬似音波と呼び、位相速度が伝搬距離の1/3乗に比例して増加し、減衰定数が伝搬距離の1/3乗に反比例して減少することが理論的に予測される。 A領域における音波の位相速度は伝搬距離によらず、一定となるはずだが、距離dが音波の波長である8.5mmに満たない範囲では、伝搬距離によって位相速度が大きく変化している。これは、音源とマイク間における多重反射や、音源表面の振動モードの混在などの影響で、平面波が形成されていないためだと思われる。距離dがそれより離れた範囲では、位相速度はほぼ理論的に予想された値になるのがわかる。 B・C領域とAの境界に近い領域でのArガス中の位相速度に関して、距離dが6mmより短い範囲では、A領域の音波と同様の特徴を示す。しかし、距離dそれより長くなると,伝搬距離が大きくなるにつれて位相速度が増加している。これは、領域Cにおいて観測される擬似音波と同様の特徴である。この時の減衰定数に関しても、領域A内であるにも拘らず、領域Cにおいて予想される特性に近い減衰を示している。このように、mfp<dとなる領域でも、mfpがdの数十分の一程度になる低ガス圧においては、dが一波長より長い距離において、位相速度と減衰定数が領域Cの特徴を示すことが示された。
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