2000 Fiscal Year Annual Research Report
ゾル・ゲル包括法によるタンパク質分子の構造・機能解析
Project/Area Number |
12878125
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Research Category |
Grant-in-Aid for Exploratory Research
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Research Institution | Jichi Medical University |
Principal Investigator |
柴山 修哉 自治医科大学, 医学部, 講師 (20196439)
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Keywords | ゾル・ゲル法 / ヘモグロビン / 多孔性ゲル / 2状態モデル |
Research Abstract |
ヘモグロビンのT状態の酸素親和性は溶液条件に依存して50倍以上も変化するが,その構造レベルでの説明はまだない.今回,この問題をはっきりさせるため,色々な溶液条件のT状態デオキシヘモグロビン分子の構造をゾル・ゲル包括で固定し,これらの酸素平衡曲線を測定してみた.デオキシヘモグロビンが中間的な酸素親和性を示す溶液条件でヘモグロビン分子の構造を固定した場合,酸素平衡曲線は顕著な二層性を示し,T状態ヘモグロビンの中には酸素親和性の60〜100倍異なる二種類のコンホメーションが共存することが分かった.そして,これら二つの状態の酸素親和性の値は,従来知られているT状態の酸素親和性の上限と下限に定量的に一致した.また,酸素親和性の高い方のコンホメーションは陰イオンが存在しない溶液条件で安定化され,いったんこの条件でゾル・ゲル固定した試料に外部から有機リン酸の一つであるイノシトール六リン酸(IHP)を添加すると,ゲル中で非常にゆっくりとした酸素親和性の低いコンホメーションへの転移が観測された.これらの結果は,T状態の酸素親和性の最低値と最高値を規定する二つのコンホメーションが平衡で存在し,これらの存在比が変わることでT状態の酸素親和性変化が起こっていることを示している.今回ゲル中で見つかった"T状態の親和性の最低値を持つ状態"の酸素親和性は,デオキシヘモグロビン結晶の酸素親和性(結晶中では協同性は無い)と定量的に一致している.したがって,ヘモグロビンの"最低親和性状態"の構造は,デオキシヘモグロビンのX線結晶構造で与えられると考えるのが自然であろう.現在,ゲル中で見つかったもう一つの酸素親和性の高い方の未知のコンホメーションの構造的基盤を求めて,この状態の結晶化を試みている.
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Research Products
(1 results)