2002 Fiscal Year Annual Research Report
元素科学:元素の特性を活かした有機・無機構造体の構築
Project/Area Number |
12CE2005
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
玉尾 皓平 京都大学, 化学研究所, 教授 (60026218)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
檜山 爲次郎 京都大学, 化学研究所, 教授 (90026295)
時任 宣博 京都大学, 化学研究所, 教授 (90197864)
高野 幹夫 京都大学, 化学研究所, 教授 (70068138)
壬生 攻 京都大学, 低温物質科学研究センター, 教授 (40222327)
横尾 俊信 京都大学, 化学研究所, 教授 (90158353)
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Keywords | シグマ共役 / 高圧合成 / スピントロニクス / 含高周期元素芳香族化合物 / トリフルオロメチル基 / 光触媒 / ナノ磁性体 / 酸化物半導体 |
Research Abstract |
研究代表者の玉尾は,ケイ素シグマ共役系の立体配座/光物性相関についての系統的な研究を行い,今後の分子設計にとって重要な知見を集積した.その他の分担者5名の成果は以下のとおりである. 3d遷移金属元素を含む酸化物の設計、構築と新機能発現 高圧下単結晶育成:4.5GPaの高圧下でPrNiO_3の単結晶試料を育成し、放射光X線回折と電子線回折によって、金属絶縁体転移温度において斜方晶から単斜晶への対称性の低下があることを見いだした。さらに、放射光X線粉末回折のリートベルド解析から、単斜晶の絶縁体相ではNiイオンの電荷不均化が起こっていることを確認した。強相関電子系の興味深い一面である。スピントロニクス:膜面方向に強磁性(高いキュリー温度、T_C)/強磁性(低T_C)/強磁性(高T_C)の配置を持つMn系ペロブスカイト型酸化物(La_<0.7>Sr_<0.3>MnO_3)細線を作製し、高T_C領域から低T_C領域にスピン分極した電子を注入することにより実効的に磁場を引加した状態を実現し、低T_C領域のT_Cを上昇させることに成功した。スピントロニクスの先駆的実験である(高野幹夫). 高周期典型元素を含む新規結合様式の創出 ベンゼンやナフタレンに代表される、"芳香族化合物"の構成元素を高周期元素(Si, Ge, Sn, Pb)で置き換えた含高周期14族元素芳香族化合物は、合成・単離された例は全く無かった。我々は、独自に開発した2,4,6-tris[bis(trimethylsilyl)methyl]phenyl(Tbt)基を立体保護基として活用し、シラベンゼン、2-シラナフタレン、9-シラアントラセン、2-ゲルマナフタレンにつづき,本年度は、1-シラナフタレン、ゲルマベンゼンを安定な化合物として初めて合成・単離することに成功し、これらの構造・物性・反応性を解明した。特にゲルマベンゼンについては、そのアレーン錯体の合成にも成功した。また、Tbt基を活用して、ベンゼン環にケイ素を含む三員環を二つ縮環した化合物であるビスシラシクロプロパベンゼンを初めて安定な化合物として合成・単離し、その構造を解明した(時任宣博). 典型元素を含むシグマおよびパイ共役系化合物の合成法の確立 2-置換3,3-ジクロロー1,1,1-トリフルオロプロパン-2-オールに低温で有機リチウム反応剤3モルを作用させると,2,
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3-二置換2-リチオ-3-トリフルオロメチルオキシランが高いシス選択性を伴って収率よく生成することを見つけた。このリチオオキシランは種々の求電子剤と反応して対応する四置換オキシランを与える一方,オルガノピナコールボランを作用させると四置換エテン誘導体が高収率,高立体選択性で得られることを明らかにした。また,3位に塩素やアセトキシ基あるいはメシルオキシ基などの脱離基を有する1-アルキンをアセチリドとしたのち,これにシリルボランを加えてボラート錯体を調製しそのまま昇温すると,シリル基がanti-S_N2'型に分子内1,2□転位してL-シリル-1-ボリルアレンが収率よく得られることを明らかにした(檜山爲次郎). 可視光活性TiO_2薄膜の作製と評価 可視光応答性をTiO_2電極に附活することを目的として、TiO_2/遷移金属酸化物/TiO_2積層構造の電極を作製した。空間電荷層において電位勾配が再結合を抑制できる程度に大きな位置に可視光に応答する遷移金属酸化物層を挿入することにより、自然電位において可視光応答性を有する電極の作製に成功した。平成12年度に導入した多層膜作製装置(誘導結合型RFプラズマスパッタ法)を用いて、5nm以下の精度で膜厚を制御した多層膜電極を作製した。この際、挿入する遷移金属イオンの3d電子準位がシステムのフェルミ準位とほぼ同じエネルギーに存在する場合に特に大きな光応答が得られることを見いだした。これは電位勾配による再結合抑制光に加えて、遷移金属イオンの3d電子準位からのトンネル効果による伝導電子注入と価電子帯からの電子遷移が最も効率よく発現するためであると結論づけた(横尾俊信). 磁性金属ナノ構造・ナノ変調薄膜の作製と磁気物性制御 (1)楕円型(トラック型)NiFeナノドットを作製し,一つのドット内に「正」「負」2種類の磁気渦構造を合わせて3つ形成させることに成功した.さらに,それぞれの渦中心に形成される吹き出し磁化の方向を外部磁場印加によって制御し,3ビット磁気メモリーのデモンストレーションを行なった.(2)磁性NiFe細線のナノ接合を作製し,その接合部に磁壁を閉じ込めることによって,磁壁の幅や内部磁気構造を正確に制御し,磁壁による磁気抵抗効果を調べた.その結果,磁壁に起因する電気抵抗変化量がその内部構造に依存して異なることを確認した.(3)磁気モーメントの大きさがナノオーダーで正弦波的に変調したCrのスピン密度波型反強磁性構造が,異元素による周期的な単原子層置換によって制御でき,かつその磁気構造が置換原子面方位に依存することを示した(壬生攻). Less
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Research Products
(6 results)
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[Publications] Norio Nakata, Nobuhiro Takeda, Norihiro Tokitoh: "Synthesis and Properties of the First Stable Germabenzene"Journal of the American Chemical Society. 124. 6914-6920 (2002)
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[Publications] Yamaguchi S., Shirasaka T., Akiyama S., Tamao K: "Dibenzoborole-Containing π-Electron Systems : Remarkable Fluorescence Change Based on the "On/Off" Control of the pπ-π^* Conjugation"Journal of the American Chemical Society. 124. 8816-8817 (2002)
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[Publications] Ishiwata, S., Azuma, M., Takano, M., Nishibori, E., Takata, M., Sakata, M., Kato K.: "High Pressure Synthesis, Crystal Structure and Physical Properties of a New Ni(II) Perovskite BiNiO_3"J. Mater. Chem.. 12. 3733-3737 (2002)
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[Publications] Takahashi, M., Yoko, T.ほか: "Photochemical reaction of Ge^<2+> in germanosilicate glasses under intense near-UV laser excitation"J. Appl. Phys.. 92. 3442-3446 (2002)
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[Publications] Hiyama, T., Shirakawa, E.: "Organosilicon Compounds"Topics in Current Chemistry. 219. 61-85 (2002)
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[Publications] K.Mibu, et al.: "Discrete Change of Spin-Density-Wave Modulation in Cr(001)/Sn Multi-layers as a Function of Cr Layer Thickness"Physical Review Letters. Vol.89No.28. 287202-1-287202-4 (2002)