2012 Fiscal Year Annual Research Report
分断化された動物ミトコンドリアゲノムにおける複製と転写
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12F01776
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
田村 浩一郎 首都大学東京, 理工学研究科, 教授
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
LE PhuongThiThu 首都大学東京, 理工学研究科, 外国人特別研究員
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Keywords | ミトコンドリアDNA / コロモジラミ / 転写開始点 / LM-PCR / RT-PCR / 複製開始点 |
Research Abstract |
高等動物のミトコンドリアDNA(mtDNA)は、通常15~20kb程度の環状分子として存在し、13のタンパク質および12S、16S rRNA、22のtRNAをコードする遺伝子がある。転写開始点およびプロモーターは制御領域に局在し、両鎖合わせて2分子の連続したRNAとして転写されたのち分断化され、最終的にそれぞれの遺伝子ごとのmRNAができる。一方、コロモジラミ(Pediculus humanus)のmtDNAは、18種類の3kb未満の小さな分子に分かれている。そこで本研究は、(1)分断化された小分子mtDNAはそれぞれどのように複製するのか、(2)小分子mtDNAにコードされる遺伝子はどのように転写されるのか、(3)一つの大きなmtDNA分子と多数の小分子mtDNAでは、どちらが機能的に優れたシステムなのか、(4)小分子mtDNAのシステムはどのように進化したのか、を明らかにし、ミトコンドリアゲノムの機能と進化を解明する上で有用な情報を得ることを目的とした。 平成24年度は、Ligation-mediated PCR(LM-PCR)およびオリゴキャッピング(Oligo-capping)法を用い、18種類の小分子mtDNAそれぞれの複製開始点、転写開始点を決定することを当初目標とした。その結果、ND4Lを除く12のタンパク質コード遺伝子、およびlrRNA、srRNA遺伝子の転写産物に関して、5'-RACE法を用いて5'末端の決定に成功した。そこで、各遺伝子の5'末端付近にPCRプライマーを設定し、さらに上流に向かってRT-PCRを行ったところ、2~3kbに渡る長い非転写領域の増幅が得られた。この結果は、得られた各分子の5'末端はtRNAの切除またはRNA修飾因子による転写後修飾を受けることによって生成されることを示唆する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
まず、本研究ではコロモジラミを材料とするが、その継代飼育に成功し、材料は常時用意できる体制を整えることができた。今年度の当初目的である、各転写産物の5'末端の配列決定にも成功した。しかし、転写後修飾を受ける前の転写の開始点については未同定で、今後の課題として残った。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度はPCRによるcDNAの増幅を利用してmtDNAからの転写産物の解析を行ったが、この方法では転写後修飾を受けた後の分子については有効であるが、転写後修飾を受ける前の分子を調べることはできなかった。そこで、PCR増幅を行わずにcDNAの配列を決定するためには、ミトコンドリアを核から分離する必要がある。しかし、コロモジラミは小さいため、また、成虫の体は堅く弾力のある外骨格で被われており、組織をホモジナイズして細胞分画を分離することは困難である。今後は卵を集めるなど工夫してcDNAを得、次世代シーケンサを用いた網羅的解析を試みる。
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Research Products
(1 results)