2012 Fiscal Year Annual Research Report
韓国人の日本人に対する偏見の形成と低減のメカニズム
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12F02015
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
大渕 憲一 東北大学, 大学院・文学研究科, 教授
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
OH Jeongbae 東北大学, 大学院・文学研究科, 外国人特別研究員
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Keywords | 日本イメージ / 日本人イメージ / 一体化 / 分離 / 韓国人大学生 / 日本人との接触経験 / 事例調査 |
Research Abstract |
本研究は、韓国人の日本という国に対する否定的な認識を日本人に対する潜在的な偏見と位置付け、韓国人大学生の日本イメージの実態と形成要因を明らかにした上で、国イメージと人イメージの一体化と分離の視点から、日本人に対する偏見の形成と低減のプロセスを解明するものである。平成24年度は、韓国人の対日認識に関連する従来の研究を幅広く検討し、予定通りに韓国で事例調査を実施した。 事例調査は、日本という国に対するイメージが形成される多様な事例を分析することを目的とし、半構造化面接法を用いて2012年11月にソウル所在の大学で韓国人学部生17名を対象に行った。 調査結果の分析より、次のような成果を得ることができた。第1に国イメージと人イメージの一体化を確認した。「自由連想」を組み入れた事例調査から「略奪国」「加害者」といった日本イメージが多くの人から報告された。これは、「侵賂者・支配者」の日本人イメージが日本という国に対するイメージから派生したものという呉(2010)の主張を支持しており、国イメージと人イメージの一体化を表している一例といえる。第2に実態調査で使用する独自の形成要因リストを作成した。多様な事例分析より収集した形成要因の具体的な情報をリストにまとめ、実態調査(形成要因調査)の調査票に反映した。第3に国イメージと人イメージの分離を促す要因についての情報を収集した。両イメージの一体化と分離の事例を分析したところ、人に対するイメージがその集合体である国のイメージに転移するケースがみられた。一方、国イメージと人イメージを区別して捉えていると答えた人のほとんどは、自らの「日本人との接触経験」が一体化から分離に移行するきっかけとなっていた。これは、日本人に対する偏見が低減されるプロセスを考察する際に役立つ有用な情報といえる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は事例調査、実態調査、構造調査の3つから成り立っており、平成24年度の計画は実態調査の実施までであった。実際は、対日イメージ研究のみならず、外国人に対する認識や偏見を扱った最新の研究まで関連研究を幅広く吟味し、事例調査の規模も予定より大きくなったため、結果的に実態調査を行うまでは至っていない。 しかし、すでに調査票の作成など実態調査の実施(平成25年度5月予定)に向けた準備が整っており、おおむね順調に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
まず韓国の複数の大学で質問紙を用いて実態調査(自由記述式の内容調査+多肢選択式の形成要因調査)を行う。 日本イメージの内容とその形成要因を具体的に記述することにより、日本人に対する偏見(否定的な国家イメージ)の内容と形成要因を浮き彫りにする。その後、実態調査で見出した日本イメージの構造を明らかにするため、再度韓国の複数の大学で構造調査(質問紙調査)を実施する。統計分析を用いて日本イメージの形成に関する因果モデルを構築することにより、日本人に対する偏見が形成されるメカニズムを提案する。さらに直接経験と日本語学習経験の日本イメージへの影響を統計的に検証し、日本人に対する偏見が低減されるプロセスを導き出す。
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Research Products
(1 results)