2012 Fiscal Year Annual Research Report
高精度衛星データを用いた熱帯対流圏界面の変動特性に関する研究
Project/Area Number |
12F02025
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
津田 敏隆 京都大学, 生存圏研究所, 教授
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
MEHTA Sanjay Kumar 京都大学, 生存圏研究所, 外国人特別研究員
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Keywords | 赤道域 / 温暖化トレンド / 上部対流圏および下部成層圏(UTLS) / 対流圏界面最下点温度 / GPS掩蔽 / 火山噴火 |
Research Abstract |
本研究では、ラジオゾンデや再解析データなどの数種類の気象関連データとGPS掩蔽データを解析することで、上部対流圏と下部成層圏(UTLS)領域の温度変化と熱構造の特性について調べた。その結果、熱帯域の対流圏界面付近のUTLS領域が最近10年間(2001-2012)にわたり温暖化していることがわかった。そこで、そのUTLS領域の温度変化に関して近年の中規模火山噴火の影響を同定するにあたり、温度の線形トレンド、成層圏準2年周期変動とエルニーニョ南方振動成分を除去した。過去10年間に数回の中規模火山噴火が発生しているが、それに伴う明瞭なUTLS温度変化は、主に熱帯域にあるSoufriere HillsとTavurvur火山噴火によるものであった。また、それらの火山噴火後の5ヶ月間(2006/09-2007/01)にわたり、緯度±30度の低緯度における70-100hPaのUTLS層で約0.5Kの温度上昇が認められた。 さらに、GPS掩蔽データを用いて、対流圏界面の最下点温度(CPT-T)の変動に関する東西方向の非対称性を調べた。ここでは、海面水温(SST)、外向き長波放射量(OLR)と上昇流との結合を研究した。東西方向に平均したCPT-Tは、過去10年間(2001-2011)にわたり0.5度の上昇を示し、CPT-Tには、中央-東太平洋では最大の温暖化(1.0度)、南米-大西洋では寒冷化(-0.5度)、アフリカ-西太平洋では無変化といった大きな東西非対称が存在することがわかった。CPT-Tの変化は、近年の中規模火山噴火の影響とともに内部変動を除去することで見積もった。CPT-Tの温暖化/寒冷化は、異なる熱帯域にわたるSSTと上昇流の減少/増加、OLRの増加/減少に対応する。SSTの減少は、ハドレーセルの弱体化(上昇流の減少)、逆にCPT-Tの断熱加熱の原因となっている可能性を示唆した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究では、(1)UTLS温度変化に与える近年の中規模火山噴火の影響と(2)熱帯域の対流圏界面温度の近年の変化における東西非対称性の2項目について明らかにし、その成果を科学論文にまとめた。これらの2つの論文はアメリカ地球物理雑誌に投稿済みで、現在査読中である。また、以下に示す5つの国際会議で口頭発表を行っている。 (a) Regional workshop on Stratosphere-Troposphere Processes and their Role in Climate (SPARC), 4/1- 3, 2013, Kyoto University (b) Japan Geoscience Union 2013,5/19-24, Chiba (c) 2nd International Conference on GPS Radio Occultation (ICGPSRO) 2013, 5/14-16, Taiwan (d) Symposium on Microsatellite for Remote Sensing (SOMIRES), 8/8-9 2013 Chiba University Japan (e) SPARC General Assembly 1/12-17 2014 New Zealand
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Strategy for Future Research Activity |
日本学術振興会外国人研究員としての残りの期間で(1)熱帯域の対流圏界面高度変化の空間構造と(2)熱帯域の対流圏界面の逆転層の新しい描像の確立という2つの研究を完成させることを計画している。また、4/28-5/2に横浜で開催される日本地球惑星科学連合(JpGU)と7/28-8/1に北海道札幌で開催されるアジア・オセアニア地球物理学会(AOGS)で研究発表を行う予定である。
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Research Products
(10 results)