2012 Fiscal Year Annual Research Report
分子センサー・細胞操作へ向けた多孔性ハイブリッド材料の創製
Project/Area Number |
12F02040
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
北川 進 京都大学, 物質-細胞統合システム拠点, 教授
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
SUMIDA Kenji 京都大学, 物質-細胞統合システム拠点, 外国人特別研究員
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Keywords | 多孔性金属錯体 / 分子センサー / メソ構造 |
Research Abstract |
(1)多孔性金属錯体を用いたハイブリッド分子センサーの作成 今研究では、多孔性金属錯体(PCP)を水晶発振子マイクロバランス(QCM)と組み合わせることにより、分子の吸着量やその吸脱着の速度、並びに分子認識を可能とするハイブリッド(PCP/QCM)分子センサーの作成を試みた。先ず、既存のPCPのうち、化学的特性が異なるものを数種類選び、それぞれQCMの基盤にドロップキャスト法で載せ、約10種類のPCP/QCMシステムの合成に成功した。次に、様々な有機溶媒の蒸気環境下での吸脱着の特性を検討した。この一連の実験の成果として、極性があり、水素結合を可能とするアルコール等の有機分子は、親水性の高いPCP孔内ではクラスタ化し、脱着時間に大きく影響することが分かった。一方、疎水性の孔を持つPCPでは、ゲスト分子はクラスタ化せず、すぐに孔から放出される。この結果は、例えば工業的にパージ法でゲスト分子を回収する場合に、PCP由来の吸着量や選択制だけでなく、PCP及びゲストの双方の化学的特性由来の脱着速度への配慮の必要性を示している。(下記、文献1参照) (2)PCPメソ構造の合成 PCPのさらなる機能化を実現する一つの手段として、PCPの形態を制御することが考えられる。今研究では、メソ孔やマクロ孔を持つ酸化物のエアロゲルをテンプレートとして用いたPCPのメソ構造の合成を検討した。特に、酸化アルミニウムのエアロゲルにおいては、アルミニウムの金属イオンの架橋により形成されるMIL-53(Al)のPCPの合成に成功した。ここで、PCPの結晶は直径約200nmの小さなものであるが、テンプレート合成により結晶が相互的に成長しエアロゲルの構造を直接PCPに変換した形となり、従来の合成法では実現できない構造を作成した。また、MIL-53(Al)は柔軟性を示すPCPであり、ゲスト分子の吸着や温度変化によるメソ構造全体の変化も期待できる。なお、酸化鉄や酸化クロムのエアロゲルの合成に成功しており、この合成法の適応可能の領域の拡大にも着手している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24年度ではPCP/QCMのハイブリッドシステムの合成を行い、PCPにおける脱着現象の研究を実施した。 また、金属酸化物のエアロゲルをテンプレートとしてPCPのメソ構造の合成にも成功したことで順調に進展していると評価できる。
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Strategy for Future Research Activity |
先ずは、合成済みのMIL-53(Al)のメソ構造の吸着特性の評価、さらにはメソ構造由来の新たな現象を検討する。テンプレート化される酸化物の形態においてはエアロゲルのみならず、他の形態(例えば、インバースオパール構造や基盤上の二次元パターニング)も用いて、様々なメソ構造の合成に着手する。また、酸化鉄や酸化クロムのエアロゲルも原料として利用し、様々な金属を含有するPCPのメソ構造の合成を検討する。なお、PCP/QCMのハイブリッドシステムにおいては、今後はセンサーとしての機能をさらに生かしたい。例えば、選択的な吸着現象を示すPCPをQCMとハイブリッド化することにより、極低濃度でもその分子が認識、識別可能となり、センサーとして利用できると考えている。
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Research Products
(1 results)