2012 Fiscal Year Annual Research Report
多能性幹細胞の分化過程における染色体の機能的構造変化
Project/Area Number |
12F02079
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
中辻 憲夫 京都大学, 物質-細胞統合システム拠点, 教授
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
KAFER Georgia 京都大学, 物質-細胞統合システム拠点, 外国人特別研究員
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Keywords | 超解像度顕微鏡 / ヒトES細胞 / ヒストン修飾 / ヒストンバリアント / 細胞分化 / エピジェネティクス / クロマチン |
Research Abstract |
来日してからの6ヶ月間で、まず以下4点の実験技術を習得した。 1、ヒトES細胞の培養維持方法 2、幹細胞の分化方法 3、培養細胞を用いた免疫染色の方法 4、デコンボリューション顕微鏡Deltavision、3D-SIM超解像度顕微鏡OMXの使用方法 上記の技術を用いて、我々は、15種類のピストン修飾(エピジェネティックマーク)について、ヒトiPS・ES細胞と、ヒト・マウス栄養芽幹細胞、マウス・ヒト栄養膜細胞を用いて、免疫染色を行い、これらのピストン修飾の局在を解析している。具体的には、幹細胞と分化細胞において、ピストン修飾の核内分布がどのように異なるか、に着目して比較している。特に我々は、ヒトES細胞を栄養膜幹細胞へ誘導する方法を検討し、確立することに成功した。この分化誘導過程において、ヒストンバリアントの局在を追ったところ、分化初期に、特定のヒストンバリアントが、一時的に核内から核膜周辺への局在へと変化を示すことが明らかになった。核膜周辺は、核膜タンパク質やその相互作用因子などにより、ヘテロクロマチンが多く留められ、遺伝子の発現を抑制する方向に働く環境であることが、先行研究より知られている。このヒストンバリアントの一時的な局在変化は、ES細胞が栄養膜幹細胞株へ分化する過程の、遺伝子発現調節機構を反映している可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
初めの数ヶ月で実験技術を習得した後は、実験データを収集する速度が上がり、当初提案したこの実験計画の半分にあたる部分を、現在のところ6ヶ月間で達成できている。
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Strategy for Future Research Activity |
この研究計画の次の課題は、ヒトES細胞株から分化させて作成した栄養膜幹細胞が、どの栄養膜細胞系譜に分化できるのかを、栄養膜細胞系譜特異的なマーカーの抗体を用いて判定することである。分化誘導してできた細胞系譜を決定した後、上記の15種類のエピジェネティックマークの分布を、栄養膜細胞や分化誘導途中の細胞においても、免疫染色で解析し、ES細胞における分布パターンと比較した上で、分布に変化があるか検討する。これらの実験は、幹細胞が栄養膜細胞へと分化する際に、どのようなクロマチン修飾の変化が起こることが大切かを示す可能性がある。今まで以上に定量的な免疫染色の3次元分布解析を行うために、画像解析ソフトウェアImarisを用いて解析をする予定である。
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