2012 Fiscal Year Annual Research Report
絶滅危惧種クビワオオコウモリに人為的撹乱が及ぼす影響とその保全に関する研究
Project/Area Number |
12F02084
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
小山 里奈 京都大学, 情報学研究科, 准教授
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
VINCENOT ChristianE. 京都大学, 情報学研究科, 学術振興会外国人特別研究員
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Keywords | クビワオオコウモリ / マイクロサテライト / 非侵襲サンプリング / 保全生態学 |
Research Abstract |
本研究は、南西諸島に生息するクビワオオコウモリの生態、特に対象種個体群の現状とその動態について明らかにし、科学的根拠に基づいた保全策を提言することを目的としている。日本では、国内に生息する哺乳類約100種のうち、約1/3をコウモリ類が占めているが、コウモリを専門とする研究者は少なく、日本に生息するコウモリ類の生態には分布など基本的な点を含めて未解明な点が多い。しかし、主に人間活動の影響により、コウモリ類の生息域の減少が強く危惧され、保護のためにまず実態を明らかにする必要がある。本研究で対象とするクビワオオコウモリに関しては、原亜種が国の天然記念物に指定され、絶滅危惧種として環境省レッドリストに記載されている亜種もあるにも関わらず、個体群の分布やサイズ、遺伝的関係などの基礎的な情報が得られていないのが現状である。 本研究は、おおよそ1)糞試料からのDNA抽出とその利用可能性の確認、2)マイクロサテライトを用いた個体群間の関係の解明、3)その結果に基づく保全策の提言、という段階を追って進めていく計画である。 平成24年度は、試料採取を実施するための主たる調査地を決定する前に、南西諸島各地を視察し、対象種および近縁種の生息状況について情報収集を行った。平成25年1-3月には予備調査を実施し、糞試料・体組織資料の採取を行った。現在も計測して、資料の採取・保存方法、DNA抽出とその利用可能性など、方法論の確認を実施している。なお、捕獲調査に際しては、環境省からの野生動物捕獲に関する許可を受け、京都大学の動物実験に関する規定に従って調査を実施している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究分担者の外国人特別研究員としての採用が7月末であったため、平成24年度は実質的には8ヶ月間の研究期間となった。 その間に、現地視察と調査地選定、第一回のサンプル採取を実施し、現在はサンプルの分析を実施している。そのため、公表された成果はまだないが、現在分析中のサンプルに関しては平成25年度にその結果を国際会議にて公表する予定で準備を進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度に引き続きサンプルの採取を行う(平成25年7月~平成26年2月)他、得られたサンプルの分析およびデータ解析に注力する。平成26年4月頃までに全てのデータを収集し終える予定であり、マイクロサテライト解析の結果を用いて、メタ個体群構造および島嶼間の遺伝子流動などについてデータ解析を行う。これらの結果は、国際学会で発表するだけでなく、影響力のある国際誌に論文として投稿する予定である。また、得られたデータを用いて個体群存続可能性分析モデルなどのモデルによるシミュレーションを行い、絶滅が危惧される本研究の対象種の保全に関して提言を行う。
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