2012 Fiscal Year Annual Research Report
糖鎖遺伝子改変マウスを用いたコア3型O-結合型糖鎖の生体内機能解析
Project/Area Number |
12F02220
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
成松 久 独立行政法人産業技術総合研究所, 糖鎖医工学研究センター, 研究センター長
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
DU Dongning 独立行政法人産業技術総合研究所, 糖鎖医工学研究センター, 外国人特別研究員
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Keywords | O-結合型糖鎖 / レクチン / ノックアウトマウス / グライコプロテオミクス / 大腸癌細胞 / 肺癌 |
Research Abstract |
0-結合型糖鎖はタンパク質のセリンまたはスレオニンに結合した糖鎖で、様々な疾患との関係が知られており、β3GnT6糖転移酵素によって合成されるコア3型糖鎖は、癌抑制作用があるが一般に癌化により消失することが知られている。しかしながら、コア3型糖鎖の生体内での機能や癌抑制の機構は依然不明なままである。本研究では糖鎖遺伝子B3gnt6欠損マウスを使用してβ3GnT6の生理的機能の解明を目指している。 まずコア3型糖鎖の生体機能の解明には、コア3型糖鎖がどのタンパク質上に結合しているかを知る必要がある。コア3型糖鎖を特異的に認識するプローブ(抗体など)が存在しないため、そのプローブとしてまずレクチンを探索した。最適なレクチンの探索のために、コア1型糖鎖やコア2型糖鎖を発現しない大腸癌細胞LSCを用い、β3GnT6を発現する安定株(LSC+β3GnT6)を作製してレクチンアレイを行った。その結果、レクチンXが有意に親株のLSCと区別出来ることが分かり、レクチンXでコア3型糖鎖を持つ糖タンパク質を捕集することとした。現在、レクチンYでの前処理、レクチンXでの捕集の系を構築しプロテオミクスによるキャリア分子の同定を行っている所である。 また、肺癌でもムチンの産生と癌化の関連が報告されているので、β3GnT6のmRNA発現量が異なる肺腺癌を含めた癌細胞を培養し、遊走アッセイを行った。β3GnT6のmRNA発現量と細胞移動能には逆相関がみられ、肺癌細胞においてもコア3型糖鎖の癌抑制作用が示唆された。今後、上記の方法によってコア3型糖鎖のキャリア分子が同定されれば、糖鎖を介した癌の抑制の機構が明らかに出来ると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度ではコア3型糖鎖のキャリア分子の同定方法を確立することが重要であったが、捕集用の候補レクチンを決定し前処理のレクチンを加えることでより正確な糖タンパク質の同定が期待出来る。コア3型糖鎖の発現量が少ないため、まずはコア1型及びコア2型糖鎖を発現しない大腸癌細胞LSCとLSC+β3GnT6細胞を候補レクチンの同定に用いることによってレクチンの同定に至った。LSC+β3GnT6細胞でキャリア分子の同定を行い、次に肺癌細胞やマウスの大腸組織でのキャリア分子の同定へと進める予定である。コア3型糖鎖の癌抑制の機構を解析するために肺癌細胞を解析し、β3GnT6糖転移酵素による細胞移動能の阻害が明らかになり、コア3型糖鎖の接着分子や細胞移動に関連するシグナル分子への関与が考えられた。siRNAによるβ3GnT6のmRNA発現量の低下にも成功しており、肺癌の悪性化とβ3GnT6およびコア3型糖鎖の関連性をさらに解析出来ると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
コア3型糖鎖の生体内での発現量が微量であることが考えられ、生理的な条件下でのキャリア分子の同定が難しい可能性が考えられる。この場合、当研究室に有るClGalT1を腸でのみノックアウトする系を用いてコア3型糖鎖のキャリア分子を同定する予定である。同様に肺癌細胞でもsiRNAによるClGalT1のノックダウンなどにより、レクチンによる捕集効率を上げ同定を進める。 さらに、コア3型糖鎖の生体内での機能をB3gnt6遺伝子欠損マウスを用いて明らかにする。まず同定されたタンパク質の内、癌抑制や大腸の発生分化や機能維持に関連性の有る分子の発現についてB3gnt6遺伝子欠損マウスを用いて調べる。さらにB3gnt6遺伝子欠損マウスに大腸炎や腸腫瘍を誘発した疾患モデルマウスを作製し、コア3型糖鎖の有無による生体応答の変化、キャリアータンパク質の機能変化を行う予定である.
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Research Products
(2 results)