2013 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
12F02306
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
新川 登亀男 早稲田大学, 文学学術院, 教授
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
GE Jiyong 早稲田大学, 文学学術院, 外国人特別研究員
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Keywords | 法進 / 建康 / 唐招提寺 / 国際情報交換 / 中国 |
Research Abstract |
本研究は、8世紀後半に渡日した鑑真とその弟子たちが、どのような仏教文化を日本に伝え、それがどのように受容されたのか、あるいは逆に、受容されなかったのかを問い直す。つまり、文化の交流は、単なる伝播や融合の現象ではなく、つねに選択や抵抗をともなうものであり、そこに差異への自覚が生み出されてくるものと予想される。本研究は、この命題に関する事例研究をおこなうものである。 以下、平成25年度の研究実績は、1、鑑真の弟子である法進が日本であらわした『沙弥十戒并威儀経疏』全5巻の写本蒐集と調査を共同でおこなった。この経疏は、日唐間の習俗の差異などを記録した注目すべきものである。調査の結果、大谷大学蔵の5冊5巻本(揃い)、竜谷大学蔵の3冊3巻本(巻1・2・3)、高野山真別処蔵の4冊4巻本(巻1欠)を確認し、日本大蔵経本と照合作業をおこなった。現在も進行中であるが、さらに、唐招提寺蔵本を確認中である。2、中国南朝の都であった建康(現南京)の仏教文物および遺跡などの視察を共同でおこなった(11月)。南京大学の張学峰教授の教唆を得て、梁代の長干寺(阿育王塔)や同泰寺の推定地を確認し、南朝時代の都城復元と南門に至る河川・運河との関係などを踏査した。古代日本の仏教文化受容に大きな影響を及ぼした南朝文化の一端を視察することで、唐仏教文化のあり方に新視点を加えることができた。3、新川は、8月、西安における韓・中国際シンポジウムに特別参加して、仏教がなぜ流伝したのかにっいて報告した。葛(GE)は、唐代の鄭州大海寺出土仏像、五代の霊峰塔出土阿育王塔(浙江省博物館)、宋代の開封相国寺などを調査した。また、両人はともに、鑑真弟子(思託・法進)の日本での活動と思想展開に関する論文を発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
『沙弥十戒并威儀経疏』写本の確認や複写手続きに時間を要したが、その後、照合・比校は順調にすすんだ。南京調査では充分な時間を確保できなかったが、当地での研究協力者のおかげで、効率的にすすめることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
『沙弥十戒并威儀経疏』の校訂を完成させ、印刷物をもって公表する予定である。その趣旨は、日唐間の習俗や仏教理解の差異を正確に把握すること、そして、鑑真門下である唐僧法進の歴史観・仏教認識が日本でどのように受け容れられたのか、あるいは受け容れられなかったのかを、写本伝来の観点から検討することにある。
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Research Products
(5 results)