Research Abstract |
具体的内容:2012年11月に研究を開始して以来,主に量子測定に関する概念上の問題,及び,それに関連した諸問題を研究した.主な研究分野は弱値,サブ・プランク構造,量子文脈性,不確定性原理等である.とりわけ,プローブの初期状態がマックスウェル・ボルツマン分布で特徴付けられ,その温度を制御することによりプローブの初期状態の混合度が制御されるという状況において,温度の増加が弱測定の信号対雑音比を増強することを発見した.また,2つの可換な射影作用素の結合弱値を弱測定の標準的定式化を越えて相互作用の結合強度の任意のオーダーまで求めることに成功した.これから,結合強度の第1,第2オーダーからは導かれないが,高位オーダーを考慮すると,単独のプローブが結合弱値を導くことなどいくつかの興味深い結果を導いた. 意義:量子情報理論は,数学,物理学,計算機科学,情報工学等の境界領域において飛躍的進展を遂げた分野であり,とりわけ近年,弱測定の研究に注目が集まっている.にもかかわらず,本研究で成功した結合弱測定に関する全オーダーについての取り扱いは,これまで欠けていた.また,弱測定を用いることによる信号対雑音比を増強する方法は,量子度量衡学への応用が期待される. 重要性:この研究の重要性は,この成果が現在の実験技術で経験的に検証可能であるということである.弱測定が信号増幅に利用できることが知られていること,更に,本研究成果によって弱測定の信号対雑音比の増強の方法を与えることから,この技術を用いた実用的な応用を導くことが可能である.更に,プローブの温度,従って,プローブの混合度の増加が測定の感度を増すという発見は,弱値の研究の新しい方向を開く重要で興味深い発見である.
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