2012 Fiscal Year Annual Research Report
ハード状態にあるLMXBにおけるコンプトンコロナの幾何形状の探求
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12F02321
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
牧島 一夫 東京大学, 大学院・理学系研究科, 教授
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
ZHANG Zhongli 東京大学, 大学院・理学系研究科, 外国人特別研究員
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Keywords | 宇宙X線 / 低質量連星系 / 高温コロナ / 中性子星 / コンプトン散乱 |
Research Abstract |
LMXB(Low-Mass X-ray Binary)とは、弱磁場の中性子星が低質量の星と連星系をなしたもので、我々の銀河系をはじめ、銀河に含まれる代表的なX線源種族である。「すざく」による観測により、これらの系で質量降着率が減少すると、それまで幾何学的に薄く光学的に厚かった降着円盤が、幾何学的に厚く光学的に薄い高温「コロナ」となり、それが中性子星に降着するようになることを突き止めた。しかしこのコロナがほぼ球対称なのか、それとも降着面に沿って扁平に広がるのか、明確ではない。そこで本研究ではZHANG氏と共同で、dipping LMXBとそうでないLMXBの「すざく」データを詳細に比較する研究を進めた。dipping LMXBとは、軌道周期に同期してX線の強度が急に減る「dip現象」を示す天体で、dipは降着円盤の周辺にある電離吸収体で作られると考えられることから、それらは連星平面をほぼ真横から見ていると考えてよい。 本年度は、すでに「すざく」で観測された、数個のdipping LMXBのデータ解析を進めた。その結果、実はその中の一例は強い磁場をもつ中性子星である可能性が浮上した。また残る天体のスペクトルの形に大別して2種類があることから、一方がいわゆる「ソフト状態」のLMXBを円盤のコロナ越しに斜めから見ているもの、他方は当初から狙った「ハード状態」のLMXBを同じくコロナを通じて見ているもの、と推察されるに至った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ZHANG氏は2012年11月に来日後、日本の研究環境に慣れ、「すざく」のデータ解析方法を習得するまでに、多少の時間を要した。しかしその後は順調に研究が進展しており、目的とするコロナの形状にも、手掛かりが得られつつある。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の計画に沿って研究が進行しており、目的達成の見通しも得られつつある。したがって、計画に特段の変更は必要ではない。2013年度は本格的なデータ解析を進め、論文作成を目指す。
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Research Products
(2 results)