2012 Fiscal Year Annual Research Report
III-V族半導体/超伝導接合における非局所もつれとマヨラナフェルミオンの研究
Project/Area Number |
12F02325
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
樽茶 清悟 東京大学, 大学院・工学系研究科, 教授
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
SAILER Juergen 東京大学, 大学院・工学系研究科, 外国人特別研究員
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Keywords | マヨラナフェルミオン / ジョセフソン接合 / 非局所量子もつれ / 量子ドット / 量子細線 / 量子情報処理技術 |
Research Abstract |
本年度は、InAs自己形成量子ドットやInSb細線に対する超伝導電極作製法の改善に集中して研究を行なった。当初は電子線蒸着法でTiNbAs電極を形成していたが、半導体ナノ構造との結合が弱く、超伝導電流やアンドレーエフ反射に関連する特徴の観測が難しかった。しかしその後、RFマグネトロンスパッタ法に切り替え、電極の透明度を大幅に改善することが出来た。さらに試料作製方法を最適化することで、最終的には電極の超伝導臨界温度を8.5K程度、臨界磁場を3.5T以上まで向上することに成功した。また本プロジェクトの研究費でマスフロー制御装置を購入し、臨界温度と臨界磁場がより大きいNbNの作製にも着手している。 本年度はさらに、これらの電極作製法を利用してSQUID構造型超伝導/InSb細線/超伝導素子を作製し、多重アンドレーエフ反射やゲート制御可能な超伝導電流などナノ細線における超伝導輸送現象を観測することに成功した。しかしこれまで、これらの素子においてマヨラナフェルミオンの存在を示す証拠はまだ得られていない。 2つの量子ドットへの高効率なクーパー対の分離の実現と分離した電子対の非局所もつれの実証を目指し、超伝導/並列InAs二重ドット/超伝導素子も作製した。しかし作製した素子はInAsドットがランダムな位置に成長した従来の基板を用いており、二重ドットとして動作する素子を見出すことは出来ていない。そこで平行して、東京大学平川研究室と共同研究によりInAs量子ドットの位置制御成長を用いた素子作製を開始した。これまで位置制御テスト用パターンの改善と、成長前の前処理を完了した。来月成長テストの予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
固体中のマヨラナフェルミオンの探索と非局所もつれ生成の両プロジェクトとも概ね計画通りに進んでいる。最初の半年間で予定していたとおり、主に電極に関するこれまで未解決であった技術的問題をほぼ解決し、素子の測定も実際に開始している。非局所もつれでは、近々、位置制御ドットを平河研究室から受け取る段階まで進んでおり、今後、並列二重量子ドット素子作製の収率を大幅に改善できると期待する。
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Strategy for Future Research Activity |
マヨラナフェルミオンの研究では、InSbやInAs細線で構成されるSQUID型素子に集中し、電極作製法に加えて試料作製法の全体の改善を進めると共に、超伝導電流の外部磁場に対する4π振動周期の観測によってマヨラナフェルミオンの存在を実証する方針で研究を進める。非局所もつれの研究では、InAs量子ドット位置制御成長とその量子ドットを使ったジョセフソン素子の作製法法の確立することに注力し、その後、非局所もつれ実証のために提案したInAs二重量子ドットSQUID素子を作製し、測定を開始することを目指す。
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Research Products
(3 results)