2012 Fiscal Year Annual Research Report
巨大有機分子の光化学物性を扱うための励起状態分子動力学法の開発
Project/Area Number |
12F02333
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
IRLE Stephan 名古屋大学, 大学院・理学研究科, 教授
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
KOWALCZYK TimothyD. 名古屋大学, 大学院・理学研究科, 外国人特別研究員
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Keywords | 励起状態 / 非断熱分子動力学 / 密度汎関数理論 / 金属内包フラーレン / リュービル・フォンノイマン分子動力学法 / フラーレン生成反応 / 電荷移動励起状態 |
Research Abstract |
研究分担者であるKowalczyk氏は、熱・光励起状態の巨大分子について量子化学的手法に基づく解析を進めている。本年度得られた結果をまとめると次の通りである。 (a)金属内包フラーレンは光活性が非常に高く、この特徴を量子化学的に解明することは、基礎・応用両面で非常に重要である。この研究を始めるに当たり、基底状態における分子構造、電子状態を密度汎関数法(B3LYP/SVP)により決定した。実験で示唆されている構造は、エネルギー曲面における局所安定点に存在することが確認されたが、内部の金属をCs面に対して鏡映操作を行った分子の方がより安定であることが明らかとなった。 (b)我々のグループではフラーレン生成メカニズムとして、C_<60>よりも炭素数が多いジャイアントフラーレンが生成した後に、C_2分子が徐々に解離しフラーレンが生成するという「Shrinking Hot Giant」というメカニズムを提案している。このメカニズムでは、最後の段階でC_<62>からC_2分子が解離するはずであるが、実験的にそのような過程を見つけるには至っていない。そこで、Kowalczyk氏はC_<62>,C_<72>の安定性を調べるために、密度強結合理論(DFTB)を組み合わせたリュービル・フォンノイマン分子動力学シミュレーション(LvN-MD)を用いて解析を行った。本計算は、従来法であるボルン-オッペンハイマー近似に基づく分子動力学法による結果と比較した。熱力学的安定性に基づく解析を行った結果、これらの分子中での弱い結合を特定し、それらが解離すると目的のC_<60>が生成されることがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
Kowalczyk氏は、リュービル・フォンノイマン分子動力学法を様々な量子化学計算パッケージで使用することに成功した。これにより励起状態における非断熱分子シミュレーションを行うことが可能となった。これにより、励起状態に置ける巨大分子のシミュレーションが容易になった。以上のことからも、当初の計画以上に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
現在、次のようなアプローチで研究を進めて行く予定である。 (a)現在行っているC62,C72の分子動力学シミュレーションを継続し、これとは別に金属内包フラーレン(Tm)に関するシミュレーションを行い、光活性について詳細な検討を行う。 (b)色素増感太陽電池のデザインのため、色素の吸収、電子移動度などの検討をさらに進める。 (c)surface-hopping法とfragment orbital法を用いて、共有結合性有機構造体内の光電流の解析を行う。
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Research Products
(1 results)