2013 Fiscal Year Annual Research Report
超高強度ダブルネットワークゲルの化学種多様化と人工軟骨としての応用
Project/Area Number |
12F02340
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
グン 剣萍 北海道大学, 大学院先端生命科学研究院, 教授
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
LUO Feng 北海道大学, 大学院先端生命科学研究院, 外国人特別研究員
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Keywords | ハイドロゲル / 高強度 / イオン結合 / 医療材料 / 生体適合性 / 粘弾性 / 破壊力学 / 犠牲結合 |
Research Abstract |
本研究では、DNゲルの高強度化メカニズムを一般化させた「犠牲結台原理」を元に設計・合成された新規高強度両性イオン性ゲル(PAゲル)について、その強度の改良、高強度化メカニズム解明、および生体材料としての応用を目指す。 本ゲルは、+と-のモノマーを等量混合し、共重合させることで得られた、イオン架橋を持つゲルであり、高い強度・自己修復性・生体適合性を併せ持っており、人工軟骨、軟骨再生基材、マウスピースなどへの応用が期待出来る。本年度は、主に以下の2点について研究を行った。1点目は、PAゲルの分子構造と高強度化メカニズムの探求であり、具体的には、変形速度の違いが破壊物性(特に亀裂が拡大する様子)に及ぼす影響、および破壊物性や粘弾性に対する塩の効果を測定した。前者については、変形速度が速いほど亀裂進展が起こりにくく、周辺の高分子鎖が極めて大きく配向する様子が明らかとなり、本ゲルの高強度化にはイオン結合の解離―再結合によるエネルギー散逸が極めて重要であることが示唆された。後者については、塩が存在するとイオン結合が弱くなるため、粘性項が低下し、また亀裂進行が起こりやすくなることも分かった。本結果は、生体内など、塩が存在する環境での利用に際して有用な知見となる。2点目は、従来のような+と-のモノマーの共重合ではなく、ポリカチオン存在下でポリアニオンを重合するという方法で、同様のPAゲルを作製する研究である。本ゲルは、従来のPAゲルと同様に優れた物性を有した。また、本ゲルは従来のものと異なり、熱を掛けることで容易に融解⇒再形成させることが可能であり、高い加工性を持つことが分かった。 本ゲルの開発によって任意の解剖学的形状を持つPAゲルが作製可能となったことは、医療材料としての応用に向けた大きな1歩である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現在研究しているPAゲルは、当初の予定(St-DNゲル)とは異なるゲルではあるが、同種のメカニズムで高強度化しているゲルである。本ゲルも極めて高い強度と生体適合性を有しており、医療材料として有用である。本研究によって、PAゲルの強度発現メカニズムや生体内での物性変化について理解が深まった他、加工性の著しい向上も成し遂げられている。このまま研究を続けることで、PAゲルの医療材料としての応用が成し遂げられることが期待されるため、②とした。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の予定とは異なるゲルではあるが、本PAゲルも強度や生体適台性の面で医療材料として期待出来るので、本研究ではPAゲルの研究を続けていきたい。次年度は、人工軟骨としての使用にとって重要となる衝撃吸収力の向上、ゲルを任意の形に加工する研究、動物への埋め込み試験による生体内での物性変化の評価を行っていきたい。
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Research Products
(1 results)