2012 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
12F02342
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
相田 卓三 東京大学, 大学院・工学系研究科, 教授
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
LI Changhua 東京大学, 大学院・工学系研究科, 外国人特別研究員
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Keywords | ヒドロゲル / 刺激応答材料 / pH / 異方性 / 酸化チタン / ナノシート / 体積変化 / 磁場配向 |
Research Abstract |
本研究では、ナノシートやポリマーブラシなど、構造明確な一次元・二次元ナノオブジェクトを異方的に集積することにより、光・温度・pH・基質などの外部刺激に応答してマクロスコピックな物性をスイッチするシステムの開発を目指している。具体的な構成ユニットとして、チタン層状酸化物の単結晶を層1枚にまで剥離・水中分散した、'「酸化チタンナノシート」に着目した。ナノシートの水分散液にアクリルモノマーを共存させ、外部磁場を印加した状態でラジカル重合反応によるヒドロゲル形成を行ったところ、磁場によりナノシートの向きが一義的に制御される結果、光学的・機械的性質に著しい異方性をもつヒドロゲルが得られる。この特異な異方的構造を機能へと結びつけるべく、アクリルモノマーとして、代表的水溶性モノマーであるN,N-イソプロピルアクリルアミドに加えて、pH応答ユニットを持つジメチルアミノプロピルアクリルアミドを用いた。その結果、pHに応じてプロトンを捕捉・放出できる三次元高分子網目の中に、規則正しい向きに配向したナノシートを埋め込んだヒドロゲルが得られた。興味深いことに、このヒドロゲルは酸性条件下において、ナノシートの垂直方向に著しく(初期長の4~5倍)膨潤するものの、平行方向には殆ど変化しない、極めて異方的な膨潤挙動を示すことが明らかとなった。この体積変化は、pHを酸性・アルカリ性間でスイッチすることにより、系の劣化を伴うこと何度でも繰り返すことが出来る。ナノシートが高密度の負電荷を帯びていることを考えると、ナノシート間の静電反発の強弱を、三次元高分子網目中の正電荷が相殺し、その度合いがpHに応じて変化するため、特異な異方的膨潤が達成されたと予想される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ビザ申請の都合により来日が計画より遅れたことと、子供の出産のために一次帰国したことにより、研究開始当初は進展がやや遅れた。しかしながら幸運なことに、デザインしたヒドロゲルの膨潤挙動が想定外の異方性を示し、研究の方向性が短期間で定まったため、その後、順調に進展することとなった。
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Strategy for Future Research Activity |
現在、「9.研究実績の概要」に期した現象を応用した刺激応答材料への展開を試みている。類似のpH応答性ヒドロゲルは、そのすべてがポリN-イソプロピルアクリルアミドの感温相転移を利用したものであるため、限られた温度範囲でしか利用できない・応答速度が遅い・繰り返し構造変化において劣化が避けられない、などの問題点を抱えていた。これとは本質的に異なるメカニズムで駆動する本系には、様々な応用途が期待される。
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