2013 Fiscal Year Annual Research Report
ハーフメタリックマンガン酸化物を用いた純スピン流の高効率生成とそのデバイス応用
Project/Area Number |
12F02357
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
木村 崇 九州大学, 理学研究院, 教授
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
BAKAUL Saidur 九州大学, 理学研究院, 外国人特別研究員
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Keywords | スピントロニクス / 酸化物 |
Research Abstract |
室温での完全スピン偏極状態(ハーフメタル特性)が理論的に予言されているLaSrMnO3 (LSMO)膜は、結晶成長技術が極めて困難であるため、限られた研究者のみが高品質な薄膜を作製できる材料である。一方、受け入れ研究者が得意とする純スピン流生成技術も、限られた研究機関のみが実現できる技術である。この2つの研究者のシーズ技術を組み合わせることで、純スピン流実用化におけるこれまでの最大の課題であったスピン生成効率の飛躍改善を実証するのが本研究の最大の目的である。 上記に加えて、LSMOの低損傷微細加工技術、形状による磁区構造制御、スピンダイナミクスなど、受け入れ研究者の有する様々なシーズ技術をLSMOに適用し、LSMOを用いたナノスピンデバイスにおける新奇デバイス応用の可能性の探索も研究目標の一つである。 高品質LSMO膜に関して、磁区構造と電気抵抗の相関を詳細に調べ、磁壁一つ辺りの抵抗率を精密に計算する手法を開発した。更に、低エネルギーなArイオンミリングを用いて、高品質なLSMO薄膜の微細加工技術を開発した。また、磁気力顕微鏡を用いて、微細LSMO膜の磁区構造観察を試み、磁壁のピンニングポテンシャルやそのノッチ深さの関係を明確にした。図に、各種ノッチに捕獲された磁壁の磁気力顕微鏡を示す。渦型の磁壁が明瞭に観測されており、LSMO膜も強磁性金属と同様に、計上による磁区構造制御が可能であることが分かった。また、LSMOを円盤形状に加工することで、磁気渦構造の安定化にも成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
Arイオンミリングによる微細加工や磁気力顕微鏡を用いた微細スピン構造の観察、伝導特性を用いたスピン依存伝導現象の観測など、短期間に多くの成果を達成することができた。更に、Cu薄膜とSTO基板の間に発生するリーク電流を回避する手段として、熱スピン注入技術を確立することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
形状磁気異方性を用いたLSMOの磁区構造制御技術は十分確立され、デバイス構造の作製も可能となった。一方で、LSMOを成膜する上で用いるSTO基板とCuの愛称が悪く、基板の絶縁性が保ちにくくなることが判明した。新しい基板によるスピン注入実験も開始しつつある。また、それとは別に電気配線を要しない熱スピン注入技術の開発に成功した。本手法をLSMOに適用し、新しいスピン流生成技術として活用したい。
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