2013 Fiscal Year Annual Research Report
高性能グラフェンFETに向けたゲートスタック技術の研究
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12F02364
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
鳥海 明 東京大学, 大学院工学系研究科, 教授
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
LIU Wenjun 東京大学, 大学院工学系研究科, 外国人特別研究員
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Keywords | グラフェン / Dバンド / 酸素熱処理 / ダングリングボンド / Gバンド / 劣化 / ゲートスタック |
Research Abstract |
グラフェンFETに向けてグラフェン上の良好なゲートスタック形成にチャレンジしている。グラフェンは表面に垂直方向にダングリングボンドがないので通常の方法では酸化膜を形成することが難しい。そこで我々は物理蒸着的に膜を形成している。その場合にもっとも重要なのは絶縁膜堆積後の熱処理である(これは蒸着に限らず一般的にあてはまる)。今年度は絶縁膜を堆積する前にグラフェンを直接酸素雰囲気で熱処理をし、その際にグラフェンにどの程度の欠陥が導入されるかを調べた。このことは大変重要であり、どのくらいの温度域で熱処理をしてよいかを判断する材料になる。欠陥はグラフェン固有の欠陥として検出されるラマンシフトのDバンドの強度を指標とした。実際にはGバンドとDバンドの強度比を酸素熱処理温度の関数として調べた。また単層グラフェンと二層グラフェンの場合について調べたところ、以下のような大変興味深い結果を得ることができた。 欠陥形成は活性化型であり、低温領域と高温領域の二種類の活性化エネルギーが観測された。単層の場合には、高温領域で約1eV、低温側で0.1eV程度であった。一方、二層の場合には高温側で約2eV程度で低温側では計測限界以下であり、二層の場合の方が一層に比べて酸素熱処理に対して極めて強いことがわかった。また劣化の時間依存性も単層の場合がきつくなっており、今後のグラフェンのプロセスを決めていく上で重要な指標になるはずである。 これらの活性化エネルギーの起源に関しては現在考察中であるが、eV程度の値はボンドブレークに対応しており、0.1eV以下の値に対しては結合の変化と言うよりも下地との熱膨張率の違いなどによるものと考えている。今後、熱処理の雰囲気効果を含めて劣化機構を明確にしていく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
前回の報告時にはやや遅れていると自らを評価をしたが、今年度は大きく進展した。また得られた結果は大変重要であるにもかかわらず多くの場合避けられてきた領域と言える。しかし、実際には避けて通れない。このような部分で極めて新しいがグラフェンの本質に関わる結果を得られたことは大いに評価したい。
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Strategy for Future Research Activity |
今後はこの結果をさらにすすめるとともに、学会発表、論文化などを精力的にすすめたい。特に酸素以外の雰囲気における劣化の進行、あるいは熱だけの効果との分離などによって、グラフェン劣化機構のモデル化を行う。
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Research Products
(3 results)