2012 Fiscal Year Annual Research Report
ナノ構造を制御した複合系scaffoldと幹細胞による骨組織再生
Project/Area Number |
12F02380
|
Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
東藤 貢 九州大学, 応用力学研究所, 准教授
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
KAFI MdAbul 九州大学, 応用力学研究所, 外国人特別研究員
|
Keywords | 再生医療 / 組織工学 / 整形外科学 / 多孔質材料 / 幹細胞 / 複合材料 |
Research Abstract |
本研究の目的は,大規模な骨欠損の再建治療での応用を目指して,人工材料と幹細胞をハイブリッド化した人工骨組織を創製することである.具体的には,生体ポリマーや生分解性合成ポリマーとリン酸カルシウム系バイオセラミックスを複合化した材料を足場材料として間葉系幹細胞等の幹細胞を播種し,一定期間培養することで細胞を増殖・分化させるとともに細胞外基質を形成させて人工組織を構築することを目指す.初年度である平成24年度は,複合系足場材料の試作を行い,複合化の基礎技術について確認を行った.バイオセラミックスとしては,医療用材料として広く臨床応用されているハイドロキシアパタイト(HA)を選択し,有機材料としては,生体適合性と生体吸収性材料を有するポリカプロラクトン(PCL)を選択した.まず,テンプレート法を応用してHAの多孔体の作製を試みた結果,生体海綿骨に類似の構造をもつHA多孔体の作製に成功した.次に,ジオキサンを溶媒としてPCL溶液を準備しHAを浸漬後乾燥させるPCLコーティング型HA多孔体(以下,PCL/HA多孔体)を作製し,HA多孔体とPCL/HA多孔体の圧縮力学試験を行い比較検討した結果,PCLコーティングにより弾性率や強度等の力学特性が大幅に向上することが明らかになった.さらに,走査型電子顕微鏡により多孔体の微視構造と変形形態を観察することで,圧縮荷重下における変形のメカニズムを明らかにした.また,多孔体に細胞を播種し,一定期間培養することで,細胞の増殖・分化および細胞外マトリックスの形成挙動および多孔体の力学特性に及ぼす影響を調べる実験を行うために,ヒト骨髄由来間葉系幹細胞とヒト脂肪由来間葉系幹細胞の培養実験を開始した.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24年度の実質的な研究期間は4か月程度であったが,細胞培養のための足場材となる複合系多孔質材料の作製と圧縮力学特性の試験を行い,結果を得ている.特に,ハイドロキシアパタイト多孔体をテンプレート法を応用して作製し,生分解性ポリマーであるポリカプロラクトン(PCL)をコーティングした複合系多孔体の作製に成功した.また,圧縮力学特性を評価した結果,PCLコーティングにより弾性率や強度等の力学特性が向上することが明らかになった.さらに,細胞実験の準備のために,ヒト骨髄由来と脂肪由来の2種類の間葉系幹細胞の培養を開始しており,ほぼ計画通りの進捗状況となっている.
|
Strategy for Future Research Activity |
平成24年度に作製方法の基礎を確立したハイドロキシアパタイトとPCLの複合系多孔質材料の作製万法を確立する.また,新規材料として有機材料として海洋生物由来のキトサンを導入し,キトサンに化学的修飾を加えた材料についても検討する.さらに,これらの材料を足場材料としてヒト間葉系幹細胞を播種し,増殖・分化さらには細胞外マトリックス形成を行い,足場材料としての有用性,ならびに再生医療用の人工組織としての可能性について検討を行う予定である.
|