Research Abstract |
カロテノイドは, 自然界に700種類以上も存在する色素群の総称である。カロテノドは, CCD (Carotenoidcleavagedioxygenase)により, アポカロテノイド(カロテノイドの代謝産物)に代謝分解される。これまで, カンキツ果実から複数のCCD遺伝子が単離されているが, そのほとんどの遺伝子の機能が未知である。これらのCCD遺伝子の中には, 昨年度, 機能を明らかにした赤色色素のβ―シトラウリンの生合成に関わるCitCCD4も含まれる。本研究では, カンキツ果実における機能未知のCCDについて, それらの機能を明らかにすることにより, カロテノイド集積にどのような影響を与えるか調査することを目的とする。 本年度は, 昨年度に機能解析を行いβ一シトラウリン生成に関与することが明らかとなったCitCCD4遺伝子に関する研究を継続して行った。カンキツのゲノムデータベースから, これまで機能解析を行ってきたCitCCD4(以下CitCCD4aとする)とは別のタイプのCitCCD4遺伝子(以下CitCCD4bとする)が, ゲノム配列上にコードされていることが明らかとなった。そこで本年度は, β―シトラウリンを蓄積するウンシュウミカンの`山下紅早生'と蓄積しない'宮川早生'から, CitCCD4b遺伝子の全鎖長をクローニングし, 塩基配列を決定した。CitCCP4bの塩基配列は, CitCCD4aと92%の相同性であった。また, 両品種の塩基配列は同一であった。CitCCD4bを, '宮川早生'と'山下紅早生'の様々な組織において発現解析を行ったところ, 葉において最も高いレベルを示した。また, 両品種間では, 発現レベルに大きな差は認められなかった。CitCCD4b遺伝子を発現ベクターにライゲートし, カロテノイドを集積する大腸菌を用いた機能解析を行った。ルテインを集積する大腸菌に, CitCCD4bを導入し, 形質転換した大腸菌から, カロテノイドを抽出し, HPLCを用いて生成物を調査したところ, 2つの未知のピークが得られた。今後, これらのピークについて, どのようなアポカロテノイドか物質の同定を行うことにより, CitCCD4bの機能を明らかにしていきたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度の研究計画では, CitCCD4bを'宮川早生'と'山下紅早生'から単離し, 機能解析を行う計画とした。研究成果として, 機能解析をほぼ9割程度行い, さらに, 遺伝子発現解析を行ったことから, 研究全体として, おおむね順調に進展していると評価できる。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題の今後の推進方策として, まず, CitCCD4bの機能を明らかにすることが必要である。研究実績の概要でも述べたが, ルテインを集積する大腸菌に, CitCCD4bを導入し, 形質転換した大腸菌から, カロテノイドを抽出し, HPLCを用いて生成物を調査したところ, 2つの未知のピークが得られた。これらのピークについて, 物質の同定を行うことにより, CitCCD4bの機能を明らかにする必要がある。
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