2012 Fiscal Year Annual Research Report
結合オミクス解析によるパセリの抗腫瘍効果の作用機序解析
Project/Area Number |
12F02402
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
加藤 久典 東京大学, 総括プロジェクト機構, 特任教授
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
JIA Hujiuan 東京大学, 総括プロジェクト機構, 外国人特別研究員
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Keywords | パセリ / 抗腫瘍作用 / 作用機序 / プロテアソーム阻害 |
Research Abstract |
【パセリ抽出物による腫瘍細胞増殖の抑制作用およびその作用機序の推定】 細胞レベルでパセリの腫瘍増殖抑制作用を検証した結果、パセリの熱水抽出物がヒト肝がん由来細胞株HepG2において40%以上の増殖抑制効果が認められた。このことから、パセリには抗腫瘍活性を水溶性成分の存在が示唆された。 パセリにおける標的分子特異的阻害物質を推定するために、ヒト結腸がん細胞株HT-29をパセリ熱水抽出物で6時間または16時間処理した後、GeneChip Human Genome U133 Plus 2.0 Array(AHymetrix)を用い、マイクロアレイによる網羅的遺伝子発現解析を行い、変動遺伝子群を抽出した。文部科学省(新学術領域研究『がん研究分野の特性等を踏まえた支援活動』)により公開した「抗がん剤遺伝子発現データベース」と比較し、Connectivity Mapを用い、既存の抗がん剤との類似性を検討した。その結果、いずれのパセリ抽出物添加濃度および培養時間においても、パセリは臨床開発された世界初の抗悪性腫瘍剤であるボルテゾミブの遺伝子発現プロファイルとの類似性が最も高かった。ポルテゾミブはプロテアソーム阻害薬として腫瘍細胞の細胞内シグナル伝達系に作用し、細胞周期の停止、増殖抑制、血管新生抑制、アポトーシス誘導などにより抗腫瘍作用を発揮すると知られている。さらに、細胞周期進行およびアポトーシス誘導に関しての遺伝子解析結果から、細胞周期回転を促進し、腫瘍の発生や増殖速度と関連するanaphase promoting complex(M期中期からG1期後期まで)およびS-phase kinase-associated protein2(G1期後期からM期前期まで)の発現減少が認められた。これらのことから、パセリが標的プロテアソーム阻害により腫瘍の発生、進行に関連する調節タンパク質を分解することで腫瘍細胞の増殖を制御したと示唆された。今後、さらに腫瘍増殖に対するパセリの詳細な応答を解明することで、がんの発生を未然に予防できる食品素材の開発につながると期待できる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
「研究の目的」のとおりに、パセリの腫瘍細胞増殖抑制作用の確認およびその作用機序の推定ができた。
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Strategy for Future Research Activity |
パセリの腫癌増殖効果の確認および作用機序推定において足がかりになったがん細胞については、マウスを用いる抗腫瘍評価試験も可能であり、in vitroからin vivoまで試験の実施を行う予定である。具体的には、パセリ有効成分を標準飼料添加し、ヌードマウスに自由摂取させる。マウス体内固形腫瘍を形成させ、血液生化学指標を測定した後、肝臓および腫癌を用い、DNAマイクロアレイ解析(Affymetrix)を行う。また、肝臓におけるプロテオーム解析、メタボローム解析を行い、パセリが担癌生体や組織における遺伝子、タンパク質レベルの応答、調節、代謝物プロファイルの変動に及ぼす影響を調べる。
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