2012 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
12F02421
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
的崎 尚 神戸大学, 大学院・医学研究科, 教授
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
PARK Jung-Ha 神戸大学, 大学院・医学研究科, 外国人特別研究員
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Keywords | 細胞寿命 / 腸上皮細胞 / 腸内細菌 / 細胞分裂 / 細胞移動 / ターンオーバー |
Research Abstract |
本研究では最終分化後の細胞の寿命を決定する分子基盤の解明を目指し、特に、生体内でのターンオーバーが早く、この解析の糸口となり得ると考えられる腸上皮細胞を用いた解析を進めている。 まず平成24年度は腸上皮細胞の寿命を確認することを目的として野生型マウス(C57BL/6)の腸上皮細胞をBrdUで標識し、このBrdU陽性腸上皮細胞について経時的な観察を行った。その結果、マウス回腸において腸上皮細胞はクリプトと呼ばれる領域内で分裂することでBrdUによって標識され、標識された腸上皮細胞は約2日で腸絨毛の先端まで移動し、標識後約3-4日で消失していくことを確認した。つまり、マウス回腸の腸上皮細胞の寿命は3-4日であることが確認できた。次に研究代表者らは、腸内細菌と腸上皮細胞の細胞寿命の関係性について確認することを目的として、4種(アンピシリン+ネオマイシン+バンコマイシン+メトロニダゾール)の抗生物質混合液を野生型マウスに経口投与し、腸管の観察を行った。その結果、抗生物質投与群では腸絨毛の形態が細くなると同時に、クリプトでの腸上皮細胞の分裂の減少や、絨毛での腸上皮細胞の移動速度の低下、さらには腸上皮細胞のターンオーバーが遅くなっていることが確認された。また、主にグラム陽性菌に効果を示すアンピシリンを単独投与した野生型マウスでも同様の結果が得られた。これらの結果は無菌環境下で飼育した野生型マウスについても得られた。 以上の結果から腸内細菌(特にグラム陽性菌)によって腸上皮細胞は分裂や移動、ターンオーバー、さらには細胞寿命が制御されていることが確認できた。腸管における細胞死制御の異常は腸炎との関連も指摘されており、腸内細菌による腸管の恒常性維持機構の解明は重要な研究課題である。現在、以上の研究結果を基盤として更なる解析を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では細胞寿命を決定する分子基盤の解明を目的としているが、平成24年度に研究代表者らは腸上皮細胞の寿命を腸内細菌が制御している可能性を見出しており、これらの研究成果は今後の研究の端緒になると期待出来るため。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度に得られた研究成果から、今後は腸内細菌がどのような分子メカニズムで腸上皮細胞の分裂、移動、ターンオーバー、さらには寿命を制御しているのかについて解析を行う。具体的には腸内細菌自体や腸内細菌が産生する代謝物が腸上皮細胞の挙動に与える影響を調べると同時に、腸内細菌自体やその代謝物が腸上皮細胞内のシグナル伝達に与える影響についても生化学的手法を用いて解析を行う。
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