2013 Fiscal Year Annual Research Report
シロガオオマキザルにおける近親者共在の群れ間移出入パターンと適応度へ及ぼす影響
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12F02739
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
河村 正二 東京大学, 大学院新領域創成科学研究科, 教授
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
WIKBERG Eva C. 東京大学, 大学院新領域創成科学研究科, 外国人特別研究員
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Keywords | 新世界ザル / 霊長類 / 群れ間移出入性差 / 父子関係 / 血縁度 / 遺伝的集団構造 / マイクロサテライト / STR |
Research Abstract |
本研究はコスタリカ国グアナカステ自然保護区を調査地として、主にオスが群れ間移出入をするオマキザルの自然集団を観察対象として、高度多型遺伝マーカーであるshorttandem repeat (STR : マイクロサテライト)の遺伝的多型を調査し、1)どの個体間で交配が行われ、どの個体が単独あるいは共伴して群れ移出入を行うかを調べ、そのパターンが群れ中の近親者の割合にどう影響するか、2)行動や繁殖成功度にどう影響するか、3)ミトコンドリアDNAなどの伴性遺伝多型マーカーを併用することで、オスメス間で移出入パターンが異なり同所的に棲息するクモザル(主にメスが移動)及びホエザル(両性とも移動)と比較して、集団内・集団間多様性のパターンがどう異なるかを検証する。 Wikberg研究員は2013年4-5月に現地調査を行い、新たにオマキザル20群、ホエザル24群、クモザル2群から総計173個の糞資料を収集した。6月以降Wikberg研究員は研究代表者研究室において、従前からの主要研究対象であり以前に糞試料収集済みのオマキザル隣接5群からの486試料に対して、15-20種類のSTRの遺伝子型決定を完了した。さらにこれら5群から約60個体の成体についてミトコンドリアDNAの部分配列決定と解析を行った。また、ホエザルについて40個体について2-7種類のSTR遺伝子型決定を行った。 行動観察により、オマキザルの大部分のオスは単独でなく他のオスと連れ立って群れを移出入しており、上記遺伝子解析から、共伴移動オス間の近縁度は他のオスへの近縁度より高いことを明らかにした。結果的に共伴移入オスは同性近親者を同じ群れ中にもつこととなり、その数は出自群に留まっているメスについての同性近親者数にも匹敵していた。一方、オス間の協力関係の安定性は血縁度よりもそれまで共にいる期間の長さ(親近度)により強く依存していた。これらの知見は移出入する性別の違いとそれらの協力関係の進化に関する新たな理解につながるものであり、Animal Behaviour誌でまもなく受諾される見通しである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
多くの個体のSTRだけでなくミトコンドリアDNAの多型解析に成功し、オス間協力関係に関する重要な知見に結び付いた。
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Strategy for Future Research Activity |
さらに現地でオマキザルだけでなく、クモザルとホエザルの糞試料収集を進め、それらの多型遺伝マーカーの遺伝子型解析を行う。それにより性移動パターンの異なる種間の遺伝的集団構造の違いを検証する。
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Research Products
(8 results)