2013 Fiscal Year Annual Research Report
偏微方程式の超局所解析理論の精密化と、その力学系理論への応用
Project/Area Number |
12F02782
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
森本 芳則 京都大学, 人間・環境学研究科, 教授
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
WITTSTEN Jens S. 京都大学, 人間・環境学研究科, 外国人特別研究員
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Keywords | 力学系 / 超局所解析 / 準古典解析 / 変分問題 |
Research Abstract |
前年度からの研究課題である, 部分的双曲力学系の摂動問題と重み付き調和方程式の上半平面ディリクレ問題に加えて, 新たに2重特性をもつ擬微分作用素の研究に関連して, 非等方的な媒質中の波伝播現象の例である, 微分情報をもつ地震波トレース補間の変分法的定式化の研究に着手した. 第1課題については, 摂動の枠組みで用いられる反復数に対する一様性に関する技術的な困難を克服し, 力学系にあらわれる転移作用素の離散スペクトル, および準古典極限におけるスペクトル・ギャップの安定性に関する結果を得ることに成功した. 力学系摂動問題に対して相関関数の減衰指数の堅牢さなど重要な結果が得られた. 第2課題については, 解の一意性が成立すれば, 境界値からのポワソン積分として解が一意的に表現でき, 重み付き調和方程式の解に関するポテンシャル論の基本問題が解決するため, まず実対称部分に対するディリクレ問題を考察し, 解の一意性を明かにし, その方法を発展させたPaley-Wiener-Schwartz型定理といくつかの付随する結果を得ることができた. 第3課題については, 地震波トレースにおいて微分情報が利用可能であると想定して, 欠けているトレースに関する地震データを補間挿入する方法で問題の変分法的定式化を試みた. 変分問題は補完データを伴う構造テンソルの最小固有値に対する最小積分を求めることになり, 変分問題の解は, ある種の楕円型偏微分方程式をみたすが, 解は通常と異なる非等方的分散問題の定常解を考察ことにより得られ, また方程式の解の一意性は, 変分問題に対して提案する数値スキームにより得られる解の一意性を保証することが明らかになった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
双曲力学系の軌道分布の時間発展を表す転移作用素について, そのスペクトルは元の力学系のエルゴード論的性質と深く関係していることが知られている. Faure等による準古典解析的な方法による結果を, 単純なモデルではあるが, 摂動が存在する場合に拡張し, スペクトル・ギャップの安定性, 相関関数の指数的減衰など, 力学系の重要な性質を示すことに成功し, 結果を査読附き雑誌に投稿中である. 他の2つ研究課題についても, 結果を査読附き雑誌に投稿中あるいは投稿準備中である.
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Strategy for Future Research Activity |
部分的双曲力学系の摂動問題については, ランダムな摂動に課した条件の緩和と, 考察するモデルの一般化を, これまでの研究で用いた超局所解析の方法を精査することにより検証する. また, 非等方的な媒質中の波伝播現象の例として, 微分情報をもつ地震波トレース補間の変分法的定式化の研究を行ったが, 今後, 他の非等方的な波伝播現象への超局所解析理論の応用を試みる. これらの研究を遂行するため, 国内外の研究集会に参加すると共に, 必要に応じて海外の研究者との研究討論からの専門的知識の提供を受ける.
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Research Products
(2 results)