2013 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
12F02793
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
村尾 美緒 東京大学, 大学院理学系研究科, 准教授
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
FABIAN Furrer 東京大学, 大学院理学系研究科, 外国人特別研究員
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Keywords | 量子暗号 / 連続変数 / 不確定性原理 / 安全性証明 / 量子相関 / 情報整合 / エントロピー / 量子鍵配送 |
Research Abstract |
ハイゼンベルクの不確定性原理は、量子状態の準備や測定の際には2つの相補的な観測量に必ず揺らぎが生じる事を表している。近年、観測者が被測定系と量子相関を持っている場合に対しても、量子状態の準備に関する不確定性原理が拡張された。この不確定性原理は、量子暗号における量子鍵配送での任意の盗聴に対する安全性証明に用いることができ、特に電磁波の強度を用いた連続変数の量子系を用いた量子暗号の解析に有効である。 今年度の研究では、量子相関がある場合の連続変数の不確定性関係を、更に一般的な数学を用いて拡張することに成功した。得られた不確定性関係は、場の量子論に対しても適用することが可能であり、量子暗号や量子情報のみならず、より広い分野への発展可能性を持つため重要である。さらに、より一般的な盗聴に対して安全性を保証する、拡張された不確定性原理に基づく連続変数の量子暗号を実験で実装するための研究も進め、強い相関を持つ非二値の暗号鍵を効率よく生成するための、実験の状況に合った情報整合の方法を考案した。この情報整合は、相関を利用して発生したエラーを訂正する第1段階と、非二値の符号処理からなる第2段階で構成されている。 さらに、量子系の測定に関するトレード・オフを記述する不確定性原理についても研究を進めた。量子状態の準備に関する不確定性関係はこれまでにも多くの研究がなされてきたが、エントロピーを用いた操作論的な観点からの測定に関する不確定性関係は未解明であった。我々は、測定に関する誤差と擾乱のエントロピーを用いた不確定性関係を明らかにし、量子ビットの系で等号達成可能であることを示した。この関係式は、位置の測定の精度と運動量の擾乱の強固な特徴付けを可能とするという点で大きな意義をもつ結果である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通りに、量子状態準備に関する拡張された不確定性関係を更に一般の量子系に対して拡張することに成功した。また、実験による連続変数の量子暗号の実装に向けて、理論的に十分効率のよい情報整合の方法を考案した。この理論を元にした実験は既に開始しており、2014年4月末に終了する予定である。さらに、測定に関するエントロピーを用いた操作論的意味を持つ明確な不確定性関係を示し、異なる測定の誤差に対してもより良い理解を与えるという、非常に重要な結果を得た。
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Strategy for Future Research Activity |
我々が得た測定に関する不確定性関係の状況設定は、逆方向の情報整合による量子鍵配送の状況と合致している。ただし現状では、この不確定性関係で用いられる測定誤差のエントロピーを暗号処理に直接用いることが出来ない。そこで今後は、量子鍵配送の安全性を評価することが可能なエントロピーを用いた不確定性原理によるトレード・オフ関係式を明らかにすることを目標としたい。
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Research Products
(6 results)